キャリア教育コラム

学生でもできる、日常的にクリティカルシンキングを実践する方法

更新日:2021/05/14

ネットで調べればなんでも分かる世の中、社会から求められるものは「知識」から「自分で考える力」になってきています。情報が錯綜する時代だからこそ、その情報が正しいのかどうか見極める力は必須です。だからこそ、自分で客観的に考える力「クリティカルシンキング」の需要は高まってきています。特に、これからの時代を生きる若い世代には、今のうちに学んでおいて欲しいですよね。

 

では、クリティカルシンキングはどうやって鍛えるのでしょうか。ここでは、学生でも普段の生活でクリティカルシンキングを使える場面とその考え方を、具体例を挙げつつご紹介いたします。ぜひ最後までご覧ください。たった3つのポイントを意識することで、クリティカルシンキングのコツが分かります。

 

 

クリティカルシンキングの基本的な姿勢

クリティカルシンキングの基本的な考え方について、3つおさらいします。

 

①考える目的を明確にする
「なんの為にそれを考えるのか?」「考えた先にどうしたいのか?」など、考えることに対する目的や導き出す答えを明確にします。

 

②考え方の癖を意識する
経験や環境によって、誰もが考え方に癖があります。自分にも考え方に偏りがないか、自分の先入観だけで判断していないか意識しつつ、さまざまな方向から物事を考えてみるといいですね。

 

③最善策、最適解を求め続ける
導いた答え以外に答えはないのでしょうか?その答えは現実的でしょうか?他にもっと適切な答えがないかを探し続けます。

 

クリティカルシンキングの基本的な解説はこちらの記事をご覧ください。

クリティカルシンキングとは?思考法を学べる参考書籍5選

 

クリティカルシンキングの鍛え方

 

クリティカルシンキングの概要が分かったところで、次は実践できるように鍛える方法をみていきましょう。実践に移す主なコツとしては、

 

①    前提を疑う
②    ロジカルシンキングを取り入れる
③    他の可能性を模索する

 

の3つが挙げられます。

 

①前提を疑う

学生など、特に経験が浅い内は、思い込みや先入観など、自分の考えに囚われた発想をしがちです。思い込みはしていませんか?与えられた情報は本当でしょうか?「そういうものだから」で思考停止していませんか?というように、前提を考えさせるような質問を投げかけましょう。そうしているうちに、生徒が自然と「自分も相手も正しいかもしれないし、間違えているかもしれない」と考えられるようになると、クリティカルシンキング習得に繋がります。

 

②ロジカルシンキングを取り入れる

ロジカルシンキングとは、理由から主張まで筋道が通っている考え方のことです。ロジカルシンキングの例としては、演繹法、帰納法、ロジックツリー、MECE等が挙げられます。事実と意見を分けて考えるのもポイントです。

 

③他の可能性を模索する

自分の都合のいい情報だけ鵜呑みにして結論を出している生徒がいるかもしれません。本当にその結論しかないのか考えさせてみましょう。反対意見に耳を傾けたらどうか、出した結論の手前まで戻って再度考えてみたらどうか、など生徒に提案するといいですね。

 

学生に起こりうるクリティカルシンキングが必要な例と、その際の実践方法について

次に、どのような場面でクリティカルシンキングを使えるのか、例を挙げてご紹介します。

 

例①SNS

A「よく行く〇〇ってお店、食べ物の中に異物が混入していたんだって」
B「本当に?どこの情報?」
A「SNSだよ」
B「SNSの情報なんて本当かどうかわからないよ。新聞の情報なら信じられるけど」

 

現代の中高生は、SNSで情報を簡単に手に入れられます。SNSは、誰がどのように入手した情報を発信しているのか分かりません。SNSは、集合知としては優秀ですし、幅広い情報が手に入るので、上手く活用すれば良い情報媒体になります。しかし、全ての情報を信用してしまうのは情報源が明確でない以上危険です。よって、Bの言う「本当かどうか分からない」というのはもっともです。SNSの情報は「間違っているかもしれない」と念頭に置くほうが良さそうですね。

 

しかし、Bは新聞の情報を全面的に信用してしまっています。本当に新聞の情報は信じられるのでしょうか。確かに新聞は発行元が分かっているぶん、SNSよりは信用できると考えるのは妥当でしょう。ただ、新聞記事を執筆し編集しているのも、SNSで発信しているのと同じ人間だということを忘れてはいけません。

 

「情報の発信源は信用できるから、この情報も信用できる」と全面的に信用するのではなく「情報源はしっかりしているけれど、情報が本当かどうか分からない」と、物事を分けて考えられるようになるといいですね。

 

例②学校へ行きたくない

A「明日は学校を休みたいな」
B「私も勉強したくないな。他の皆も、本当は勉強したくないと思っているよ」

 

この会話、筋道が通っていないことに気が付きましたか?Aは「学校を休みたい」とだけ言っているのに対し、Bは「みんな勉強をしたくない」という思い込みだけで、Aが学校に行きたくない理由を決めつけてしまっています。

 

①    「Aは学校を休みたい」に関しては、Aが「学校を休みたい」と言っているのは事実なので、これは正しいでしょう。

 

②    一方の「Bや他の皆は勉強したくない」ですが、自身のことを言っている点では、とりあえず正しいと考えます。ただ「他の皆」に関してはどうでしょう。これは、あくまでBの推測に過ぎませんよね。主語が大きく、かつ「みんな」が勉強をしたくないという確認が取れているのか不明瞭なので、正しいとは言い難いです。

 

③    「だからAは学校へ行きたくない」この結論はどうでしょう。Bは「自分は勉強したくないから、Aも勉強をしたくない」と決めつけています。Bは勉強したくなくても、Aは勉強するのが好きかもしれませんよね。「勉強が嫌い=学校へ行きたくない」も、必ずしも成り立つとは限りません。もしかしたら、Aは他に悩み事があるのかもしれませんし、ただなんとなく「学校行きたくない」と思っただけという可能性もあります。

 

よってこの結論は、前の2つの条件から導き出されるものとして「正しい」とは言えません。このように、小さな前提と大きな前提から結論を導き出す考え方を「三段論法」と言い、演繹法とも呼ばれています。

 

三段論法を使うときは、

・前提が正しいこと
・結論が飛躍していないこと

 

に注意します。上記の例は、前提が正しいとは言えず、結論も飛躍している悪い例です。もしBが主語を自分だけにしていれば「前提が正しい」と言えたでしょう。結論にしても、自分とAは考え方が違う可能性があると考えていれば、このような飛躍はしなかったかもしれません。このように、クリティカルシンキングは、コミュニケーションを円滑にする手段にもなるのです。

 

例③成績が伸びない

 

A「英語が苦手で、なかなか成績が上がらないんだよね」
B「英語はとにかく量だよ。たくさん英語を読めば、すぐ成績もあがるよ」
A「本当?分かった、とにかく英語をたくさん読んでみるね」

 

AはBの勧めで、とにかく英語を読むことにしたようです。しかし、本当にこれが最善だったのでしょうか。たしかに、英語をたくさん読んで慣れることで、英語の力は伸びると言われています。Bの言うことは間違ってはいないでしょう。ただ、これは「Aが英語の基礎をおさえている」ということが条件になってきます。

 

もしAさんが動詞について分かっていないのであれば、まずbe動詞と一般動詞について学ぶ必要があります。何が述語で何が修飾語なのか分かっていないのであれば、まず文法を理解しなければなりません。単語を覚えていないのであれば、「とにかく英語をたくさん読む」というのも効率的かもしれません。ただ「like」「apple」のような基本的な単語を覚えていないのであれば、まず単語を覚えたほうか良さそうです。基本的な単語を覚えていたとしても、Aが「読みまくる」より「単語はとにかく書いた方が覚えられる」のであれば、Aにとっては書いて覚えた方が効率はいいでしょう。

 

このように、一度結論がでても、それが本当に最適なのかを吟味することが大切です。もちろん、やってみなければ分からないこともあります。ただ、それが「やってみなければ分からいこと」なのか「明らかに最適ではないこと」なのか分類することも必要です。生徒たちがだした結論には、大人が「その結論で本当にいいの?」と問いかけ、学生たちに結果を吟味するよう促しましょう。

 

あまりにも問いかけが多すぎると、学生たちが「否定されている」「信じてもらえていない」と感じるかもしれません。そうならないように、言い方や頻度には気をつけましょう。最終的には、生徒たち自身で結果を吟味する癖がつくようになるといいですね。

 

まとめ

クリティカルシンキングときくと、なにか特別なことをしなければならない気がしますよね。でも、実は生徒でも使える場面がたくさんあります。

 

①    前提に対し「なぜ?」「本当に?」と問いかけてみること
②    ロジカルに考えてみて、筋道が通った考え方ができているか確認してみること
③    他の可能性を探り続けること

 

この3つを日常生活で常に意識させてみてください。はじめは、すぐに良い結論が思い浮かばないかもしれません。しかし、まずは「的確に問題を発見し、考えてさせること」が大切です。結果を急ぐより、まずは「考える」工程の密度を濃くすることが、クリティカルシンキングを習得するために最も必要なことです。

 

 

 

 

 

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部