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STEM教育とは?~中学校実践事例~

更新日:2021/04/29

近年、世界全体の動きとしてITや科学技術の発展が目覚ましく、世の中は多様化してきています。こうした世の中の動きに取り残されないためにも、私達はIT化する社会への適応、またITや科学技術に強い人材育成に力を入れていくべきです。とはいえ、理工系に強い人材を育てるためにはどうしたらいいのでしょうか。

今回は、理工系の学習を強化した教育、STEM教育を実施している中学校とその実践例をご紹介していきます。中学生にSTEM教育を施すにあたり私たちが意識すべきことも合わせて、ぜひ最後までご覧ください。

STEM教育の目的とは

STEM教育について簡単に確認します。ぜひこちらも合わせてご覧ください。

STEM教育とは?時代に求められる科学技術人材育成

STEMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の総称を指す言葉です。つまりSTEM教育とは、科学やITの技術全般の指導を重視した教育ということになります。

ただ単に、科学や技術、工学や数学を使える人材を育てる、ということではありません。STEMを学習した生徒が自ら考え、新しい価値を創造し、その上で生じる問題を解決する能力を身につけるのが、STEM教育の最終的な目的です。というのも、今の世の中「既存の情報を早く正確に処理する能力」に関しては、人間より人工知能の方が秀でています。いくら生徒が科学やITの技術を学んでも、ただ使えるだけでは人工知能には敵いません。そこで、これからは人工知能が苦手とすること「新しいものを発想し創造する能力」が、私たち人間に求められるのです。

STEM教育の現状

技術レベルが上がり、世界が求める人材はより多様化しています。そんな世界の動きに合わせ、アメリカやシンガポール、中国といった主要な国々では、既にSTEM教育が浸透しているようです。

一方、日本はというと、世界からみると遅れている、というのが現状でしょう。日本は、最近になってようやくプログラミング授業を導入し始めました。また、タブレットを積極的に活用する動きも見られます。しかし、既にSTEM教育が浸透している国々に追いつき、世界に通用する人材を育てるには、まだまだSTEM教育の環境を整える必要がありそうです。

中学生にSTEM教育を施す上で重視すべきこと

中学校、言い換えれば義務教育の間は、生徒たちに「興味」を持たせるのが一番の目標です。前述の通り、STEM教育とは、科学・技術・工学・数学の分野を強化した教育になります。しかし、生徒たちに一方的に教えても、そう簡単に生徒はその分野に強くなれません。それどころか、生徒たちが「やらされている感」を抱き、科学・技術・工学・数学に対してマイナスなイメージを持つ可能性があります。現状、日本の生徒は世界平均に比べ、数学や理科の学習への関心が低い傾向にあります。

これは、IEA(国際教育到達度評価学会)が実施するTIMSSという調査の結果の一部です。TIMSSとは、算数・数学及び理科の到達度に関する国際的な調査のことを言います。2019年(平成31年)、IEAは日本の中学校2年生およそ4400人(142校)と世界39か国・地域を対象に、数学や理科の勉強を楽しいと思うかどうかを調査しました。上の表から、数学、理科、ともに日本の中学生の関心度は国際平均を下回っていることが分かります。

関心度が低いということは、それだけ主体的に学べる生徒の割合が低いということが推測できますね。日本人中学生の数学・理科の学習理解度自体は、実はそれほど悪くありません。しかし、STEM教育の目的からみると、それだけでは不十分です。STEM教育の目的は「自ら考え、新しい価値を創造し、その上で生じる問題を解決する能力を身につける」ということでした。いくら数学や理科の学習理解度が高くても、それが机上で終わってしまっては、目的は達成されません。

人工知能が活躍するこれからの世の中、これからは生徒の自発的な思考力を養って行くことが推奨されます。生徒の自主性及び主体性を促すためにも、まずは生徒に数学や理科といった、科学やITの技術の基礎の分野に興味をもたせることを意識してみましょう。

STEM教育を実践する中学校の事例

では、ここで実際にSTEM教育を行っている中学校とその活動例を順にご紹介していきます。

豊島岡女子学園

東京都の豊島岡女子学園の、STEM教育に芸術(Art)の要素を加えたSTEAM教育プログラム「モノづくりプロジェクトJr.」という取り組み。2020年9月、中学1年生の生徒たちが、厚紙1枚で丈夫な橋を作ろうと試みました。評価する際には、厚紙でできた橋の強度だけではなく、その芸術性も重視したようです。STEM教育にArtの要素も取り入れられたSTEAM教育と言えるでしょう。

芝浦工業大学附属中学校

芝浦工業大学附属中学校では「ショートテクノロジーアワー」という取り組みがあります。各教科とテクノロジーの関係を教員が紹介することで、生徒の知識と関心を深める目的があるようです。他にも「サイエンス・テクノロジーアワー」といって、通常の理科実験とは別の授業も行っているようです。教員自らが身近で実用的なテーマを設定することで、生徒たちの関心興味をひきます。

また、プログラミング、美術・音楽の創作、数学教育の強化などにも努めています。STEM教育に力を入れる学校の代表と言っても過言ではないのではないでしょうか。

玉川学園中等部

玉川学園はSTEMを重要視しており、理数教育に力を入れている学校です。課外活動ではサイエンスクラブやロボットクラブでロボットの工作をし、技術を磨くことの喜びを培います。また、園児・児童・生徒と保護者と教職員共通のコミュニケーション環境「CHaT Net」という教育コンピュータ・ネットワークを使うなど、IT技術を取り入れた教育環境を整えているようです。

どうしたら生徒たちの意欲を引き出せるのか、STEMを学ぶことの楽しさを知ってもらえるか、それを教員自らも指導方法を模索しています。STEMに関して大変意欲の高い学校です。

N中学部

通信制の高校として有名なN高等学校ですが、中等部もあることをご存知でしょうか。N中等部では、国語、英語、数学などの基礎科目に加えて、プログラミング学習や、PBLを取り入れています。PBLとは、自ら問題を発見し解決する能力を養う教育方法のことを言います。PBLについては、こちらの記事にて詳しく説明しています。

問題解決型学習・PBLとは?問題解決力で「生きる力」を育む学習法

STEM教育と銘打っているわけではありません。しかし、生徒自らが課題を設定し、正解のない課題に向かって解決する能力育成を重視したり、プログラミング学習を取り入れたりする教育内容はSTEM教育そのものです。

まとめ

ここまで、STEM教育を施す上で意識すべきことや事例をご紹介してきました。STEM教育とは、生徒が自ら思考し、そして創造していく力を培う教育です。ここでご紹介したSTEM教育を実践している中学校は、中高一貫の学校ばかりでした。確かに、中高一貫の学校の方がSTEM教育にあてられる時間が多いのでしょう。しかし、STEM教育の第一歩、生徒に「興味」を持ってもらうことならば、中高一貫でなくともできます。普段の授業であれば、答えを提示し暗記させるのではなく、答えをすぐ言わず敢えて生徒に考えさせるようにするだけでも、生徒の思考力は養われるでしょう。また総合的な学習の時間に、N中等部のようにPBLを導入するよう意識してみるのも効果的です。

STEM教育ときくと、なにか特別なことをしなければならない気がしますよね。しかし、生徒に興味をもたせること、そして生徒に考えさせるだけでもSTEM教育の一歩になります。高校や大学からと言わず、中学校のうちからSTEM教育の導入の検討をされてはいかがでしょうか。

参考

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)のポイント

豊島岡女子学園

芝浦工業大学附属

玉川学園 玉川の教育

N中等部 カリキュラム

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部