キャリア教育コラム

朝食と学力・集中力との関係は?

更新日:2020/12/20

小学校では特に熱心に指導される「朝ごはんは食べた方が良い」という教え。朝食を食べたかどうかが1日の学びに影響するという考えをもとに、中学・高校と学年が上がっても、基本的にはこの指導は変わらないと思います。ただ、朝食は本当に学力などに影響するのでしょうか。今回は、朝食と学力・集中力との関係を調べてみました。

児童・生徒の朝食を食べる頻度

いきなり朝食と学力や集中力との関係性について触れる前に、まずは児童・生徒の朝食を食べる頻度から見ていきましょう。国立青少年教育振興機構が2017年に実施した、青少年の体験活動等に関する意識調査によると、「朝、食事をとること」の頻度に対する4段階の回答の分布は以下のようになりました。

 

(出典:国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)報告書)

 

この調査結果を見ると、高校2年生の朝食を食べる頻度については約4分の3の生徒が毎日食べている一方で、およそ3%の生徒が毎日食べていないということが分かりました。他の学年を見てみても、大半の生徒は朝ごはんを毎日食べているようですね。また、学年が上がるにつれて、朝食を食べる頻度が少しずつ下がっていく傾向にあることも明らかになりました。

朝食と学力の関係

先ほど、児童・生徒の朝食を食べる頻度に触れ、どの学年においても大半の生徒が朝食を毎日とっていることが分かりましたが、ここからは本題の朝食と学力の関係性についてみていきましょう。「学力」という言葉が何を指すかについてですが、このセクションでは国立教育政策研究所が毎年行なっている全国学力・学習状況調査で測られる教科(小学生は国語と算数、中学生は国語、算数、英語)テストをもとに、このテストにおける正答率の高さを学力の高さと定義してお話しします。

 

以下のグラフは、2019年に小学6年生と中学3年生を対象に実施した全国学力・学習状況調査において、朝食を食べる頻度と学力調査の正答率の分布を表したものです。

 

(出典:国立教育政策研究所「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査報告書」)

 

この調査結果によると、小学6年生と中学3年生のどちらも、朝食を食べている頻度が高い方が学力調査の正答率が高いことが分かります。毎日朝ごはんを食べている児童・生徒と毎日朝ごはんを食べない児童・生徒の間では、10%以上もの正答率の差が表れています。また、朝ごはんを毎日食べるかという質問に「している」と答えた児童・生徒と、「どちらかといえば、している」と回答した児童・生徒の間が、もっとも正答率に差が出ているということが読み取れます。

この調査結果から考えると、朝食を食べる頻度と学力の高さには関係があると言えそうです。特に、毎日欠かさず朝ごはんを食べることが学力に良い影響を与えていると推察することができます。この調査は高校生を対象にしたものではないため、高校生にもこの関係が当てはまると断言することはできませんが、小学生の結果も中学生の結果もグラフの形が似ていることから、高校生にも当てはまるのかもしれません。

朝食と集中力の関係

ここまで、朝ごはんと学力の関係性を見てきましたが、続いては朝ごはんと集中力との間の関係性を見ていきたいと思います。朝ごはんは、どの程度1つの物事に集中して取り組めるかということと関係があるのでしょうか。

 

朝ごはんを抜くと、その後の活動の際になんとなくイライラしたり、集中力が出ないというイメージは皆さんの中にあると思います。このイメージは本当で、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足しているために、勉強などが捗らないのです。ブドウ糖はラムネやバナナなどを食べることで効率よく摂取できると言われているのですが、体内に大量に蓄えておくことが難しく、すぐに不足状態に陥ります。朝起きたときの人間は空腹状態がほとんどですが、そんな状態のまま1日の活動を始めようとしても、前日までの食事で得たブドウ糖は十分に体内に蓄えられていません。そのため、集中力がなかなか続かないのです。

 

大塚製薬株式会社 佐賀栄養製品研究所が行なった実験では、バランスよく栄養の取れる朝食が集中力の維持に寄与することが明らかになっています。この実験は、朝食を毎日食べている成人男性20人に内田クレペリン検査用紙を利用して1桁の足し算を1分間ずる3回、1分間隔で実施されました。

 

その実験によると、朝ごはんが水のみだと集中力が低下し続ける一方で、栄養バランスの取れた洋風パン食や栄養調整食品は朝ごはんを食べた30分間は向上し、その後は集中力が朝ごはんが水のみのときよりも緩やかに低下しています。この調査結果から考えると、朝食、特に栄養バランスの取れた朝ごはんを食べることと集中力との間には関係があると言えそうです。

 

最後に

ここまで、児童・生徒の朝ごはんを食べる習慣と、朝ごはんと学力や集中力との関係性について見ていきました。朝ごはんと学力については、調査対象が小学6年生と中学3年生でしたが、関係があるように見受けられました。そして、朝ごはんと集中力については、相関関係があることが明らかになりました。

 

冒頭で触れた朝ごはんを食べるかどうかについては、学年問わず大半の児童・生徒が毎日食べていますが、学年が上がるにつれて徐々に毎日食べる人の割合が減っていくことが明らかになりました。朝ごはんと学力や集中力との関係を見た上でこの結果を見ると、朝ごはんを毎日きちんと食べるということを教育する重要性が高まったのではないでしょうか。

特に勉強の内容が難しくなっていく高校生に対しては、勉強や課外活動が忙しくなって睡眠などを優先した結果、朝食を取ることをついつい後回しにしてしまいがちな年代かもしれません。そんな中で改めて朝食の重要性を伝えていく必要がありそうですね。

参考資料

大塚製薬
国立教育政策研究所
国立青少年教育振興機構農林水産省
LOTTE

 

 

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部