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キャリア教育における評価(成績)の付け方を解説

更新日:2024/02/02

キャリア教育が重要視され推進されているため、学校ごとに特色のあるキャリア教育が実施されています。年間計画を作り就業体験を位置付けて実施する学校が多い中、評価の方法で困っているキャリア教育担当の先生もいるのではないでしょうか。他の教科とは違って、テストの点数を参考に評価できないところがキャリア教育の評価の難しさです。今回は、キャリア教育の評価の付け方や評価の際に大切なことを簡単に解説していきます。

キャリア教育の2種類の評価

キャリア教育の評価には、大きく分けて2種類の評価があります。

 


1つは、生徒の成長や変容に関する評価です。キャリア教育においては、生徒自身がこれまでの経験や、今取り組んでいることを振り返り、それを将来につなげようとする視点が欠かせません。教員が生徒のキャリアに関する活動を振り返り、評価をすることで、それがフィードバックになり、生徒が自分自身や将来について深く考えるきっかけになります。

 


もう1つは、教育活動としてのキャリア教育全体の評価です。キャリア教育の実践をより効果的な活動にするためには、目標や授業などの評価、改善が必要になります。例えば、目標設定は妥当であったか、生徒は積極的に取り組んでいるか、期待した変化や効果の兆しはあるかという視点を持ち、振り返る必要があります。
これらの2つの評価を使うことで、生徒にとってキャリア教育がより有意義になり、キャリア教育の内容もよりよく改善していくことができます。
今回は、その中でも前者である生徒の成長や変容に関する評価について紹介していきます。

キャリア教育における児童生徒の評価

では、キャリア教育の「生徒の成長や変容に関する評価」について簡単に紹介します。
キャリア教育を実施する際は、生徒が成長したか、変容したかなどを評価する必要があります。評価といっても、他の教科のようにテストの点数があるわけではないので、様々な評価方法を活用する必要があります。評価をする際は、記述式で生徒の成長をまとめている学校が多いです。
文部科学省の資料を参考に、児童生徒の変容を評価する際に留意したいことと、評価のために活用できる学習成果物を紹介していきます。

キャリア教育の評価で留意すること

キャリア教育の評価をする際に、留意しておきたいことが2つあります。

 


1つ目は、各教科や道徳、総合的な学習、特別活動の評価基準の中に「キャリア教育の視点」を盛り込むことです。キャリア教育は「キャリアに関する授業」の中で評価するものというイメージを持つことが多いですが、実際は、学校での教育活動全体にキャリア教育の視点を忘れないことが大切です。

 


2つ目は、進路指導の評価にキャリア教育の視点や内容を取り入れることがあげられています。進路指導をする際に、キャリア教育の視点や内容を取り入れながら実施することで、生徒の成長や変容を見逃すこともありません。

 

評価のために活用すべきもの

実際に、生徒の成長や変容を評価するためには、キャリア教育に関する学習活動をまとめたポートフォリオを作成し、積極的に活用することが求められています。

 

評価の対象となる学習成果物の例としては、
・生徒が作成したレポート、ワークシート、ノート、作文
・学習活動の過程や成果の記録
・自己の将来や生き方に関する考え方の記述
・生徒の自己評価や相互評価の記録
・保護者や地域、職場の人々による他者評価の記録
・教師による行動観察記録
・学習成績 
このようなものがあげられます。

進路学習で使ったワークシートやレポートなどを、1つのファイルにまとめて、生徒一人ひとりのポートフォリオを作ることで、評価の際に役立ちます。また、生徒自身も自分の将来を考えるために、ポートフォリオを使って振り返りをすることもできますよね。

 

キャリア教育の評価に大切な指標づくり

生徒の成長や変容を評価する前に、しっかりと準備しておく必要があるのが、評価指標づくりです。
キャリア教育の指標がはっきりしていなければ、適切な評価はできません。
そのため、キャリア教育で「身につける力」を明確にすることと、生徒の実態に応じて「カスタマイズする」ことの2つの視点をもって、指標を作っておく必要があります。

身に着ける力をはっきりさせる

評価の指標づくりで大切なことの1つは、キャリア教育を通して、生徒が「身につける力」を明確にすることです。どのような力を身につけるべきかがはっきりしていないと、キャリア教育の全体計画や、進路学習の授業などの目標もあいまいになってしまいます。生徒にどのような力を身につけたいのかを、教員組織で議論して、共有することが大切です。また、身につける力は概念やキーワードで示すだけではなく、生徒が卒業までに身につける力を明確に定義することで、学校全体でキャリア教育の指標がはっきりします。明確な指標があれば、教員もキャリア教育の授業や評価に困らずに対応することができます。

実体に応じてカスタマイズする

キャリア教育の評価の指標は、学校の特色や生徒の実態に応じてカスタマイズすることも大切です。例えば、キャリア教育で身につけたい4つの力(人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力)がありますが、これらの能力をどの程度身につける必要があるかは、生徒の実態によって変わってきます。そのため、キャリア教育の評価の指標を考える際も、生徒の実態に合わせて、重点などを変えてカスタマイズすることで、より生徒たちに合ったキャリア教育を展開することができます。

 

評価を実施する際に確認したいこと

最後に、実際に生徒のキャリア教育活動の評価をする際に、確認しておきたいことを3つ紹介します。
評価の指標も決まり、評価規準がはっきりしたら、評価の具体的な方法を確認することで、スムーズに評価をすることができます。

 

誰が評価するのか

1つ目は、誰が評価をするのか考えておくことです。キャリア教育の評価には、「自己評価」と「他者評価」の方法があります。自己評価は、生徒が自分自身でキャリア教育の取り組みや、成長を振り返る評価です。教員が観察するだけではわからない生徒の思いを知ることができるので、キャリア教育では大切な評価材料の1つです。他者評価は、教員が生徒の達成度を評価する場合や、他の生徒に評価をしてもらう場合があります。他者評価のメリットは、客観的な評価ができたり、評価をフィードバックとして生徒が確認することで、自分への理解を深めることができたりする点です。複数の評価を実施することで、偏りのない見方ができるので、誰が評価するのかは事前に計画しておく必要があります。

 

いつ評価するのか

また、評価の時期をあらかじめ決めておくことで、「学期の終わりに焦って評価をする」ということも防ぐことができます。キャリア教育の評価の実施時期は、取り組みの前後に評価を繰り返す方法が使われることが多いです。例えば、職場体験の前と後に評価を実施することで、職場体験で生徒がどのように変容したかを知ることができる上、職場体験の効果も確認することができます。行事が重なって、アンケートの回数が増える場合には、学年の最初と最後の計2回の評価を実施して、生徒の変化を見るという方法もあります。
キャリアに関わる行事や、進路学習の計画にあわせて、評価の時期をあらかじめ設定しておくと安心です。

 

どのように評価するのか

キャリア教育の評価を実施する上で、確認しておきたいことの3つ目が、どのように評価をするのかです。これは、「誰が評価するのか」にも関わりますが、評価方法を1つにせずに、多面的な評価をするのが望ましいです。例えば、「自分を理解する」という項目があったとして、自己評価をする場合は、目標を高く持っている生徒は自分自身を低く評価をしてしまう可能性があります。教員側から見ると、その生徒は一生懸命、自己理解に取り組んでいるのに、自己評価のみに頼ることで、点数が低くなってしまうのです。そのため、1つの評価方法だけを使うのではなく、多面的に評価ができるように計画する必要があります。自己評価と他者評価を組み合わせたり、数値による客観的な評価を取り入れてみたりするなど、多様な評価方法を使うことが大切です。

 

実態に合わせて多様な視点での評価が大切!

今回は、キャリア教育の評価の仕方を紹介させていただきました。生徒のキャリア教育に関する活動を評価する際は、学校で評価の指標を明確にして、様々な方法で評価をすることで、生徒の成長をしっかりと評価することができます。

 


キャリア教育の時間は、生徒が自分自身についての理解を深め、自分の将来について真剣に考える貴重な機会です。そのため、教員やクラスメイトからの他者評価は、生徒がよりよい将来設計をするための大切なヒントになる可能性があります。
生徒の実態に合わせた評価指標を作り、貴校のキャリア教育をより充実させましょう。

     

執筆者:Strobolights