キャリア教育コラム

アクティブラーニングは本当に活きているのか? 現役大学生の声から考える効果

更新日:2020/08/20

昨今の教育現場に変化をもたらしている新学習指導要領。そんな新しい指導要領ですが、その核になっているのは主体的・対話的で深い学び、つまりアクティブラーニングです。ただ、アクティブラーニングは本当に効果のある学びなのでしょうか。今回は、アクティブラーニングを体験したことのある現役大学生52名に、その効果を実感しているのかを聞いてみました。

アンケート調査の概要

今回は大学生にオンラインアンケートを実施しました。調査の詳細は以下の通りです。

 
  • 調査期間:2020年8月10日~2020年8月18日
  • 調査方法:全国の大学生にインターネット上で回答を依頼
  • 回答数 :63件
 

回答してくださった大学生の情報については以下の通りです。お忙しい中ご回答くださった皆様、ありがとうございました。

中学校・高校でのアクティブラーニングの経験

調査の結果を発表する前に、本記事や調査におけるアクティブラーニングについて定義したいと思います。ここでは文部科学省の定義(注1)に従い、アクティブラーニングをグループディスカッション、ディベート、複数人でのプロジェクト遂行、調査学習、プレゼンテーション、反転学習、体験学習として定義します。


 

では、アクティブラーニングの経験について見ていきましょう。アンケートの回答は以下のようになりました。

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回答者のうちの80%以上が(52人)中学校か高校のいずれかでアクティブラーニングを経験していました。






経験者の方々にはどのような形態のアクティブラーニングを経験したかを聞きましたが、その回答は次のようになりました。

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一番多く経験したアクティブラーニングの形態はグループディスカッションで、プレゼンテーションやディベートが続きます。






そして、経験した学校の設立区分は以下の通りで、中学校・高校ともに私立学校が大半を占めています。

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大学生に聞いたアクティブラーニングに対する満足度

調査に協力していただいた大学生のアクティブラーニング経験について触れたところで、ここからは本題のアクティブラーニングに対する大学生の評価について見ていきましょう。今回は、大学生に中学校・高校で経験したアクティブラーニングの評価について、4段階評価で回答してもらいました。結果は次のようになりました。

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回答総数のうち、およそ4分の3の大学生が中等教育でのアクティブラーニング経験が「非常に役立っている」もしくは「少し役立っている」と感じているようです。役立っていると感じる場面としては大学の授業が最も多く、クラブ・サークル・学生団体などの活動やインターンシップが続きました。



ここで、大学生がどのように役立っていると感じているかについて少しご紹介しましょう。




「プレゼンテーションの経験は、人前で話すときの緊張を少し和らげたと思う。」
(私立高で経験)

 

「中高のころは資料を作ってプレゼンするのが苦手だったのですが、アクティブラーニングを通じて先生方にフィードバックなどをもらいつつ練習を重ねることで、大学に入ってからはプレゼンが苦手と感じることがなくなりました。」
(私立中・私立高で経験)

 

「中高でグループワークが多かったので、大学の演習科目でグループプロジェクトがあった際、中高時代に身につけた話の進め方や盛り上げ方を実践できて、自分のグループがクラスで1番いい評価をもらうことができた。」
(国立中・公立高で経験)

 

このように、ディスカッションやプレゼンテーションを行う上での緊張や戸惑いが緩和され、自分の意見を伝える力や傾聴力など、他者とのコミュニケーションにおいて役立っているという意見が多く挙がりました。


一方、約4分の1の大学生はアクティブラーニング経験が「あまり役立っていない」「役立っていない」と感じています。そう感じている理由について、以下のような声が上がりました。

 

「自分の作った成果物に対するフィードバックが曖昧なため。恐らく、現場の教師陣も社会で求められる水準を理解していないと思われる。」
(公立中・私立高で経験)

 

「アクティブラーニングの絶対量が少ないから。私が通っていた公立中学校では年に3回あるかないかだった。また、アクティブラーニングをやっても、教師が必要以上に生徒間の議論に干渉し、生徒の主体性を引き出せずにいるから。」
(公立中・私立高で経験)

 

「形式的に、例えばディスカッションを行っているだけで、アクティブラーニングの本義である人の意見を通して自分の意見を考え直す、という所まで達していないように思えたから。」
(私立高で経験)

 

主に、アクティブラーニングを経験する機会の少なさや質、そして教師によるフィードバックに対する物足りなさについての声が聞かれました。他にも、周囲の学生との意欲の差なども指摘されました。中には、「経験としては良かったが、それを経験してこなかった人との差を考えた時、特にプラスになって活きていることがないと感じているから。」(私立中・私立高で経験)という意見もありました。

 

アクティブラーニングの効果を高めるには

ここまで、大学生が実感するアクティブラーニングの効果について取り上げ、75%の学生が中学校・高校でのアクティブラーニングを大学生活などに活かし、その効果を実感していることが分かりました。他方、その効果に疑問を持つ学生も少なくはありませんでした。学生の意見として、アクティブラーニングの機会を多く持ったことでその効果を実感したり、逆にその機会の少なさのために効果を実感するまでに至らなかったりした点から、十分な機会を確保することがまず必要になりそうです。その上で、生徒のアクティブラーニングに対する干渉度合いを見極め、生徒の意見を重視しつつもフィードバックを行うことが重要になってくるでしょう。

 

参考資料

 

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部