キャリア教育コラム

メディアリテラシーとは?向上方法、指導案も紹介!

更新日:2021/05/30

ICT教育が学校現場で導入され始め、小学校低学年であってもメディアリテラシーが求められるようになりました。メディアを正しく活用できれば情報収拾に大いに役立ちます。しかし活用の仕方を誤れば、メディアの発する情報に踊らされ結果的に大きな損失をしてしまったり、情報の扱いを軽んじることでトラブルに巻き込まれたりします。それを防ぐためにも、生徒のメディアリテラシーを養う必要があります。では、どうすればメディアリテラシーは育まれるのでしょうか。今回はその向上方法を、具体的な指導案も合わせてご紹介します。

メディアリテラシー

メディアリテラシーとは

まず「メディア」とは、新聞・テレビ・インターネットなどの情報媒体のことを指します。そして「リテラシー」とは「読む能力・書く能力」のことを言います。「メディアリテラシー」というのは、メディアが発信する情報を批判的思考に基づいて精査し、発信者の意図や意味を読み取り、自分の意見を発信することができる能力・スキルのことです。以前よりメディアリテラシーは重要視されていましたが、近年それは更に重要性、必要性を帯びています。

メディアリテラシーの重要性

メディアリテラシーが重要視される理由として「情報を曲解せず真意を読み解けるようになるため」「情報を鵜呑みにせず精査できるようになるため」「情報の扱い方を誤りトラブルに巻き込まれることを防ぐため」以上3つが挙げられます。

情報の真意を読み解けるようになる

メディアで情報を発信しているのは人間です。いくら発信者が正しい情報を発信していたとしても、やはり情報の偏りや発信者の主観が入ります。情報の受け取り手が「事実」と「発信者の主観」を分けて考え、情報の本質を見抜くことができなければ、誤った理解の仕方をしかねません。また、文章を正しく読み取る読解力も基礎能力として求められます。

情報を鵜呑みにせず精査できるようになる

情報を正しく理解することも重要ですが、そもそもその情報は本当に正しいのでしょうか。現在、インターネットの利用者は日本の人口の8割を超えています。インターネットの利用者が増えたというのは、「情報を発信する人が増えた」ということでもあります。誰でもメディアの発信側になり得るということです。情報の発信者が個人だった場合、情報を検閲、精査せず、憶測や噂を事実かのように述べている可能性は高いです。クリティカルシンキングを活用し、情報を見極める能力が必要になります。

トラブルに巻き込まれることを防ぐ

SNSや書き込みサイトを通して、誰でもメディアになり得るようになりました。同時に、情報を発信することへの抵抗も薄れます。よって、情報をよく吟味せず発信してしまったり、誹謗中傷をしたり、自分や他人の個人情報を流出させてしまうことが増えました。情報はあっという間に広がり、気づいたときには収拾がつかずトラブルに発展した、というケースが多々あります。トラブルを未然に防ぐためにも、情報の扱い方を早いうちから学ぶ必要があります。

メディアリテラシーの向上方法

メディアリテラシーを向上させるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは6つご紹介します。

情報の発信元を確認する

情報の発信元を確認することは、その情報に信憑性を持てるかどうかの判断基準になります。手軽に情報を発信できるSNSや書き込みサイトだと、その情報が発信者の憶測である場合がほとんどです。仮に発信者が念入りに調べた情報であっても、受け取り手が誤解する書き方のまま発信している場合があります。情報を鵜呑みにする前に情報元を確かめることで、どこまで正確なものなのかを判断します。

事実と意見を分ける

書かれている情報を「事実」と「意見」で分けます。意見を知ることが悪いのではありません。他人が事実に対しどう考えたのかを知るのは、多様性を学ぶことにも繋がります。しかし「個人の意見」を「事実」と誤認してしまうと、正しい情報を受け取ることができなくなります。更には誤認したまま「事実」と称し発信することで、誤った情報を世に広めてしまう可能性もあります。「事実」と「意見」を分けて情報を整理するためにも、まずは見極める力を養いましょう。

情報の発信者の立場になって考える

発信者の立場になってみることで、情報を慎重に読み取ることができます。発信者は何を伝えたかったのか。どんな意図があるのか。どのように情報を捉えたのか。そこに発信者の先入観や思い込みはないのか。何が発信者の意見なのか。本当のところは発信者本人にしか分かりませんが、発信者の立場になって想像を膨らませてみることで、情報を丁寧に咀嚼できます。

情報を比較する

より情報の正確性を求めるのであれば、似ている情報を比較するといいでしょう。同じ情報を伝えていたとしても、発信者の捉え方や表現は違います。それにより、読み手の受け取り方も変わります。バイアスにとらわれないためにも、似ている情報集めて情報の本質を抽出しましょう。

逆の主張にも目を通す

似ている情報を比較するだけだと、取り入れた情報が偏ってしまう可能性があります。例えば「農薬は健康に害を及ぼす」という情報があったとします。似た主張を集め、正確性の高い情報を抽出した結果「残留農薬が健康に害を及ぼす」という結論がでました。しかし、そこで敢えて「農薬は健康に害を及ぼさない」という主張にも目を通してみます。すると「残留農薬は基準値であれば、健康に害を及ぼす可能性は低い」という情報を得ることができました。このように、仮定と逆の主張や意見に目を通すことで情報を精査することができます。

情報を扱う上でのマナーを知る

情報を扱う際、肖像権、著作権、プライバシー保護に関する配慮などを知らずにいるとトラブルに巻き込まれる可能性があります。法やプライバシーを犯すような発信をすれば訴えられてもおかしくはありません。トラブルを未然に回避するためにも、まずは知ることが大切です。

メディアリテラシー教育の指導案

メディアリテラシーの向上方法をご紹介しました。では、具体的にどのように生徒に指導するといいのでしょうか。具体的な指導案を提案します。

調べ方を考えさせる

生徒たちは今後、自分で膨大なメディアを活用して情報を収集します。情報の読み取り方を指導することも大切ですが、メディアの選択方法を指導することが根本として重要です。例えば生徒に調べ物の課題をだしたところ、ある生徒から「調べても分からない」と言われたとします。「調べても分からない」というのは、どういう意味でしょう。調べ方が分からないのでしょうか。調べた結果、書かれている文章が読解できないのでしょうか。情報が多すぎて何が正しい情報が分からなくなっているのでしょうか。生徒は何が分からないのか分かっているのでしょうか。

 

まずは、生徒に「何についてどのように調べた結果、何がどう分からないのか」で質問するように促します。これには2つの意図があります。1つは、質問される側が短時間でベストアンサーを出しやすくするため。もう1つは生徒自身のためです。明確に言語化できるまで、生徒自身に何で行き詰まっているのか整理させます。もしここで考えすぎてしまう生徒がいた場合「どうやって調べた?」「どんな結果がでてきた?」「どこまで分かった?」と質問することで、絡まった思考をほぐしてあげましょう。

 

生徒が言語化できたら、次は「じゃあどうしたらいいかな」と問いかけることで生徒本人に解決策を考えさせます。生徒なりの答えが出てきたり、逆に悩んで考え込んで困り始めたりしたら、そこで助言します。「ネットだけじゃなくて本でも調べてみよう」「情報元で情報を取捨選択してみよう」「分からない言葉があったら、その言葉についても調べてみよう」などと、情報獲得手段やその幅広さ、可能性を提示します。「調べても分からない」と言う生徒の例を出しましたが、生徒が不確定な情報に踊らされている場合でもこの流れは有効です。

 

生徒が今後、自分で情報を精査できるようになるためには「情報を得た過程を整理すること」「情報に溢れた世の中で、どう情報を探っていくか」を学ばせることが大事です。ただ、生徒は生徒なりに真剣に調べています。この一連の流れを実行する上で、決して生徒を貶める発言がないように気をつけましょう。

文章の中身をカテゴリ分けする

メディアの文章中には、大きく分けて「事実」と「意見」があります。メディアの情報を整理し何が「事実」で何が「意見」なのかを判断する練習が必要です。

 

新聞や雑誌など紙媒体のメディアを用意し、生徒に「事実」と「意見」をマーカーで色分けさせ可視化すると生徒にとって分かりやすいでしょう。ある程度慣れてきたら「事実」という括りから「揺るがない事実」「発信者の主観が入り混じった事実」、「意見」という括りから「根拠のある意見」「憶測」と、より細分化して分ける練習も始めます。このようにカテゴリ分けする練習をすることで、普段から「事実」と「意見」を分けてメディアを読み取れるようになります。

 

論じる力を鍛える

論じる力をつけるのも、メディアリテラシーを鍛える方法として有効です。「論じる力」というのは、ロジカルに筋道をたてて意見を主張する力です。論じる力がつくと、文章の読み手側になってもそこに説得性があるかどうかが分かるようになります。とはいえ、いきなり論じる力を求められても生徒たちは戸惑ってしまうでしょう。そこでまずは「意見はそう考えた理由も述べる」「反対意見を想定し先回りする」この2つを意識させます。

 

どういう経緯でその意見に至ったのか、根拠はあるのか。そこまで考えられるようになると、メディアにある情報に理由や根拠があるのかまで意識を向けられるようになります。

 

「反対意見を想定し先回りする」というのは「私はこのような理由で〇〇だと考えました。〇〇という意見もあると思います。しかし、私は〇〇だと考えます」と、想定し得る反対意見に対して先に反論しておくということです。反論まではできず、意見を繰り返すだけになるかもしれませんが、重要なのは反対意見を想定できる想像力を養うことあります。他の意見を想像できると、メディアを読み取る際にも「これとは別の意見もあるかもしれない」と情報に対して慎重になれます。情報を鵜呑みしないためにも、論じる力、批判的に読む力を培いましょう。

まとめ

ここまでメディアリテラシー教育の向上方法や指導案をご紹介してきました。総じて言えることは、生徒自身に考えさせる教育、つまりはアクティブラーニングを意識しましょう。生徒が自分で情報をより正確に読み取り、その信憑性を判断できるようになるには、生徒自身が考える練習が必要です。今回ご紹介した方法をぜひ参考にしてみてください。

 

◎参考資料

農薬の基礎知識:農林水産省 (maff.go.jp)

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部