キャリア教育コラム

【高校・大学】受験を控えた生徒(子ども)への向き合い方・ポイント

更新日:2021/12/08

2021年度には大学受験は、センター試験から大学入学共通テストに変更となり、新しい試験方式に戸惑う方は少なくないかと思います。ただでさえ、競争が激化している受験社会の中で、試験の方法が変わるということは、生徒・保護者・教員の皆様に不安が募るばかりではないでしょうか。特に受験を控えた子どもたちには、多大なるストレスがかかっているかと思います。

 

今回は高校受験や大学受験を控えた生徒とどのように向き合っていくのか、子どもたちとの接し方・サポートの仕方について紹介します。

子どもたちが感じている受験によるストレスとは?

子どもたちが成長をしていく上で、困難を乗り越える経験は必要なものです。受験がそのチャレンジをする機会になり得りますが、『受験うつ』ということが生み出されるなど、受験による過度なプレッシャーにより、受験どころか日常生活にも支障がでてしまい、子どもたちの希望を閉ざしかねません。そもそも、受験によって子どもたちが感じるストレスはどのような状態になのでしょうか。

 

受験による子どもたちのストレス症状として

・プレッシャーにより感情の起伏(特にイライラや不安といった感情)が激しくなり、感情が爆発したり、何かから逃げ出したいという衝動に駆られやすくなる

・思ったような結果が得られないことから、やる気や自信がなくなり、無気力になり、ふさぎ込みがちになる

・他の生徒たちと自分を比べてしまい、劣等感を感じてしまう など

といったような状態が挙げられます。

 

思春期という多感な時期も重なり、受験を控えた子どもたちへの接し方・向き合い方は、非常に気を遣う部分が多々あるのではないでしょうか。イライラから「ほっといてほしい」、「話しかけないでほしい」というメッセージを子どもたちが発せられることもあると思いますが、気を遣いすぎるあまり、無関心と捉えられ、より子どもたちがふさぎこんでしまう危険性もあります。だからと言って、過度に手を出しすぎると、良かれと思ってやっていたことが子どもたちに、より大きなストレスを与えてしまうこともあります。

また、子どもたちに自信をつけさせようと過度な承認や全てを肯定しすぎるのもよくありません。進学や就職後、「大人たちが甘やか過ぎたから、新しい生活になってからこんなにつらいと思わなかった。ダメなものはダメと言ってほしかった」という不満を漏らす生徒もいたという事例もあります。

 

ほっときすぎるとダメ。かまいすぎるとダメ。では、どのような接し方が良いのでしょうか?生徒たちとの接し方には、適度な距離とコミュニケーション、つまり、見守ること、が必要になってきますが、言うは易く行うは難しいものです。見守り方の方法について紹介していきたいと思います。

コーチングの手法を使っての向き合い方・接し方

元々、英語の「coach(馬の手綱を引く)」が語源となっています。指導すること、と認識されがちですが、子どもたちの気持ちや可能性を引き出すことがコーチングの本流であると言われています。コーチングには、以下の行為が重要視されています。

 

①傾聴:ただ話を聞くのではなく、文字通り、耳を傾けてしっかり聞くこと

②質問:相手の中にある気持ちを引き出すこと

③承認:相手の気持ちを汲み取ったり、相手の存在を認め、評価すること

 

①傾聴では、子どもたちが話しやすい環境を作り出すことが重要となります。後述のキャリアカウンセリングの手法でも説明しますが、相づちや繰り返しなど、聞き手の意見を発するのではなく、話し手である子どもたちに寄り添うことがポイントになります。

 

②の質問で注意する点として、質問ではなく詰問にならないよう注意することが大事です。「なぜ(WHY)?」という質問の方法は詰問になりやすくなります。「WHY?」ではなく、「それはどんなこと、何か(WHAT)?」の形で質問することで思っていることを引き出していくを心がけていきます。例えば、「なぜ勉強をしなかったのか?」と聞くのではなく、「どのようなことがあったから、勉強をしたくなかったのか?」といったような形で、責めるのではなく気持ちや言葉を引き出す質問に変換していくものです。

 

③の承認では、まず相手の言動を受け止めてあげることが必要です。子どもたちが発した言葉を事実として受け止め、話してくれたことを肯定・認めつつ、客観的にそれを感じてどう感じたのか伝えていくことになります。この際、注意することとして「YES→BUT」ではなく「YES→AND」の形で伝えるとう良いでしょう。 子どもたちが感じたことと反対のことを伝える場面もあると思います。そういった場合にも、「あなたはそう思ったんだね。でも、私はこう思う」といった承認した後に頭から否定の形で伝えるのではなく、「あなたは思ったのだね。ちなみに、私はこう思う」という風に受け止めた後に否定の接続詞を使わず、子どもたちの言葉を否定せず、自分の想いを伝えるという形になります。

 

キャリアカウンセリングの手法を用いた子どもたちへの接し方・向き合い方

コーチングとは違う手法として、キャリアカウンセリングという手法があります。この手法では以下の4つのスキルが基本的な姿勢です。

 

 ①相づち
 ②傾聴
 ③繰り返し
 ④言語的な言い換え

 

①の相づちでは、日常のコミュニケーションでもよく使われている技法です。話し手である子どもの話を相づちをしながら、しっかり聞くものです。

②の傾聴は、コーチングでも重要視されている技法です。相手の目をしっかり見て、話を聞くものです。①の相づちも②の傾聴も、話し手である子どもたちと積極的に向き合って話を聞く姿勢の表れとも言えます。

 

③の繰り返しとは、話し手である子どもたちが発した言葉をそのまま繰り返すことで、次の言葉を話しやすくする雰囲気や質問として用いるものです。例えば、「〇〇だと思っている。」という話を子どもたちがした際に、「〇〇と思っているんだね?」という形で繰り返し質問することで、〇〇だと思っていることのその先の気持ちを聞き出していくものになります。

 

④の言語的言いかえとは、子どもたちが発した言葉を要約したり、整理するといった行為のことを指します。例えば、「先生から頼まれごとがあった」、「勉強をしなかった」という二つの関連する事象を別々に言葉が発せられた場合、「先生から頼まれごとがあったから、勉強ではなく、先生の頼まれごとを手伝っていたんだね」というように、言葉の言い換えをすることで、子どもたちの言葉をまとめ・整理をするものです。

 

コーチングにしてもキャリアカウンセリングにしても気を付けなければいけないポイントとして、聞き手側が話したいこと・単に興味本位で聞きたいことを聞くのではなく、話し手である子どもたちの気持ちや話したいことをしっかり聞くという姿勢が重要です。コミュニケーションだけでなく、こうした姿勢は行動にもつながり、押しつけにならず、良かれと思ったことが子どもたちにストレスになるということを防ぐことにもつながっていくのではないでしょうか。

まとめ

験を控えた子どもたちは非常に大きなプレッシャーやストレスを抱える可能性があります。そのリスクを減らしたり、そのような状況になった際の接し方・向き合い方について、今回はコミュニケーションの手法を中心に紹介しました。周りのサポートにより、プレッシャーやストレスを軽減することはできますが、結果を伴う受験ではそれだけでは、生徒の不安を取り除くことはできません。過去の記事でも紹介しましたが、子どもたちは「自分に自信があっても、他社と比べてしまうと、自己評価が引くなってしまう」という傾向に陥りがちです。

 

平時から、生徒たちの「自分はできる」といった自己効力感を培うことができるサポートも必要になってきます。
生徒の自己効力感の高め方には、過去の記事でも紹介していますので、こちらもご参考ください。

 

中高生が抱く自己肯定感の現状は?どう接したらいい?  

こうした手法を用いながら、受験を控えた生徒たちが、自らの将来に向けてチャレンジできる環境を整えるためには、生徒自身の努力だけではなく、周りの接し方が非常に重要になってきます。生徒もサポートする側もプレッシャーやストレスを感じすぎない環境をつくるために、今回紹介した記事が少しでも貢献できれば幸いです。

 

<参考資料>

新宿ストレスクリニック
LightWorksBLOG

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部