キャリア教育コラム

探究学習指導の上で教員も知っておきたいトピックス【地域探究編】

更新日:2025/12/24

2022年度から本格導入された「総合的な探究の時間」では、生徒が自ら問いを立て、調査・分析・発表を行うプロセスが求められます。なかでも「地域」に関する探究は、生徒にとって身近でありながら、社会課題とも直結する優れたテーマ領域です。特に首都圏以外の高校生にとっては気になるトピックスであり、自分ごと化しやすいといえます。また政府を中心にさまざまなデータが公開されており、調べ学習として情報ソースに辿り着きやすく、探究学習の入門編として導入しやすいテーマでもあります。

一方で、こうした地域探究を指導するにあたり、教員自身が地域の構造的課題やデータ、自治体との連携の可能性、他校の実践事例などを把握していないと、表面的な活動にとどまってしまうリスクもあります。

本記事では、地域探究を成功に導くために、教員が押さえておきたい重要トピックスを3つに厳選してご紹介します。


日本の地域課題の“構造”を把握しておく:人口減少と若者流出

地域をテーマにした探究では、「過疎化」「高齢化」「空き家」などが頻出キーワードです。しかし、それらは個別事象ではなく、人口動態や産業構造の変化といった大きな流れの中に位置づける必要があります。

教員が押さえたいポイント

  • 総務省や内閣府が公表する「地域の人口推計」や「地方創生関連政策」などの基礎データは、生徒に“地域を見る視点”を与える教材になります。
  • 2023年の調査では、市区町村の約73%が「若者の定着・還流」を最重要課題に位置づけています(総務省・地域政策課)。

指導上のヒント

  • 生徒が「自分の住むまちはなぜ若者が少ないのか?」といった“問い”を構造的に捉えられるように支援する。
  • 進路指導との連携で「地元就職・Uターン」の意識調査を生徒自身が行う探究活動も可能。
  • 地元自治体の「地域創生総合戦略」を読み解かせることで、課題の“本気度”を生徒が実感できる。

地域との連携を“指導の中に組み込む”視点をもつ

地域探究の醍醐味は、「学校の外」とつながることにあります。探究指導では、地域の企業・行政・NPO・住民などのステークホルダーとどう協働するかを設計段階で考えることが求められます。

教員が押さえたいポイント

  • 文部科学省が支援する「地域協働型探究プログラム」では、各地の高校が企業・大学・自治体と連携し、生徒がリアルな課題に挑む事例が多数公開されています。
  • 探究を「教員が一人で抱え込む」のではなく、地域側の“教育支援者”とチームで取り組む意識が重要。

指導上のヒント

  • 「総合の時間」以外にも、家庭科・地理・情報・英語など教科と横断して地域テーマを扱うと、指導負担が分散され、生徒の学びも深まる
  • 探究の成果を自治体職員や企業に対してプレゼンテーションする機会をつくると、生徒の本気度も格段に上がる。
  • 地元の大学生や若手社会人にゲスト参加してもらうことで、生徒との年齢距離が近くなり、意見交換が活発化。

探究の深まりを支える“問いの質”と“データリテラシー”

地域をテーマにしても、「○○市の魅力を発信しよう」だけでは表層的です。生徒の問いが深まらないままポスターやスライド制作に終始してしまうケースも少なくありません。それではせっかくの探究学習の実施目的が達成されないプログラムになってしまいます。

そうならないためにも教員が知っておきたいのは、問いの立て方や比較視点の持たせ方、そして信頼できるデータの使い方です。

教員が押さえたいポイント

  • RESAS(地域経済分析システム)やe-Statなどの公的データを活用して、地域の現状を“数字で見せる”ことが探究の深化につながる。
  • 「魅力」や「課題」は見る人によって異なるため、**比較対象や多面的な視点(住民・観光客・学生など)を与えることで生徒の思考が深まる。

指導上のヒント

  • 例:「高齢化が進むA町」と「若者が定着しているB町」を比較させる探究にすることで、“なぜ違いが生まれたか”を考えさせる。
  • 「空き家」「買い物難民」「交通不便」などのキーワードを地図上にマッピングさせる活動は、生徒の発見を促す。
  • データの裏付けがある主張と、印象や感想だけの発信の違いを、生徒に体験を通して学ばせる。

地域探究は“学校と社会をつなぐ実践の場”

地域をテーマにした探究学習は、教員にとっても“外の世界”と教育を接続する挑戦です。生徒の視野を広げ、自分の将来や地域への関心を育む場として、大きな可能性を持っています。

だからこそ、単に「生徒に自由にやらせる」だけでなく、教員側が知識・連携・データの観点から学び続けることが、探究の質を高める鍵となります。

改めて我々が住む土地について考え直す、良い機会になるでしょう。

     

執筆者:Strobolights