キャリア教育コラム

アクティブ・ラーニングとは?文部科学省が推進する理由と3つのポイント

更新日:2021/04/24

アクティブ・ラーニングは、教育機関や教育界では今、最も注目されている学習方法の1つです。教育機関や教育界にいらっしゃる方、また教育について関心のある方であれば、最近アクティブ・ラーニングという言葉を聞く機会が多いのではないでしょうか?アクティブ・ラーニングという学習方法は、大学をはじめ、幼稚園から小・中・高等学校などの多くの教育機関で、すでに取り入れられ始めています。なぜ各教育機関で取り入れ始められているかといえば、国の教育の方針を決める文部科学省がアクティブ・ラーニングを推進しているからというのが一つの理由です。具体的には、文部科学省が平成29年に公示した「新しい学習指導要領の考え方」にも、このアクティブ・ラーニングの視点を取り入れた各学校の授業の改善、推進について記載がされています。

アクティブラーニングイメージ

この記事では、そもそもアクティブ・ラーニングの定義とは何か、文部科学省がアクティブ・ラーニングを推進する理由、アクティブ・ラーニングの役割、そしてアクティブ・ラーニングの3つのポイントをご紹介していきます。

 

この記事を読めば、なぜ文部科学省がアクティブ・ラーニングを推進しているのか、理解を深めることができるでしょうまずは、アクティブ・ラーニングの定義からご紹介していきます。

 

1.アクティブ・ラーニングとは?文部科学省の定義

それではさっそくアクティブ・ラーニングについて解説していきたいと思います。従来の授業では、教員が生徒に対して一方的に講義をする形式が一般的でした。このような一方的な講義形式とは異なり、学修者(「新しい学習指導要領の考え方」ではこの字を使用しています。)の積極的な授業への参加を促す授業や学習法の総称のことをアクティブ・ラーニングと呼びます。簡単に言うと従来の「受動的な授業・学習」とは真逆の「積極的・能動的な授業・学習」のことです。

アクティブ・ラーニングでは学修者が能動的に学ぶことによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験などの汎用的能力の向上や育成を目指します。これらの能力を育成するために発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習などを行うのがアクティブ・ラーニングです。実際に教育機関で行われている学習方法として、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなどが有効な方法として挙げられています。

 

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2.アクティブ・ラーニングを文部科学省が進める背景

文部科学省が従来の「受動的な授業・学習」から「積極的・能動的な授業・学習」のアクティブ・ラーニングへの移行を推進しているのには理由があります。

 

年々時代が進むにつれて情報化社会がより進み、知識・情報・技術が変化をするスピードが格段に上がり続けています。そしてそのことが、私たちがこれまでに想像していた情報化社会やグローバル化といった社会的変化のスピードをさらに早めたことで、これまでの人類史に類を見ない早さで社会は変化を遂げています。それにより日本は社会や産業の構造変化が進み質の高さや豊かさをより重視した成熟社会に移行しつつあり、従来のような特定の既存組織や手法などを前提とした生き方では、時代に適応するのが難しくなりつつあります。

 

この時代に適応するために、主体的に判断をする力を身につけて多くの情報にアクセスをしながら、さまざまな出来事を経験しつつ、多様な社会のなかで自分を位置づける力を養う必要があります。また、多様な社会で他者と協調しながら生活することや時代の変化とともに現れる課題を解決する姿勢も求められはじめています。また、これらの課題には、常に正解があるわけではないことが増えてきています。正解がない問題が多く存在することは、これまでの時代にはなかったことです。そのため、これまでの教育ではこの変化の激しい時代には最適ではないと考えられはじめました。

 

また、多様な価値観を認め合う社会になりつつある変化も見逃せないでしょう。多様な価値観が認められる時代になったことで、その場の状況や相手の価値観を理解しながら自分の考えをまとめて発言したり、相手にふさわしい表現で伝えたり、答えのない課題に向き合い他人と協調しながら解決することを求められることが増えています。

 

 

 

アクティブラーニングの重要性

近年はテクノロジー分野が著しく発展しており、さらなる成長も見込まれています。しかしどれだけテクノロジー分野が発展しても、それを使うのは人間ということに変わりはありません。人間が目的を持って処理をしたり行動したりするからこそ、テクノロジーが活かされることになります。今後テクノロジーを活かしながら、よりよい社会を作るためにも人間が感性を豊かに働かせながらどのような未来にしていきたいのか、どのような社会や人生が本当に豊かなのかを自ら考え出すことが必要な時代です。

 

このような時代の変化に合わせて、多様な社会に合った人や物が求められるようになりました。時代の変化に人間がついていくために、教育分野でも変化の必要性が問われています。そしてこの変化に適応するために必要な学習方法は、従来と違ったアプローチをしなければなりません。これまでの教育はこれまでの社会に合う仕組みになっていたため、時代に合わせて教育や学習方法も変化をさせる必要があるのです。そして、この時代にあった教育・学習方法こそアクティブ・ラーニングなのです。

 

アクティブ・ラーニングでは、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を養う学習方法のため、自ら主体的に行動したり考えたりすることを覚えます。また、アクティブ・ラーニングで学ぶことで、多数の価値観に耳を傾けて相手の考えを認めたり、尊重する姿勢を学んだりことができます。時代の変化とともに社会で求められることが変わったことで、学ぶべきことも変わり、そして教育内容も変わることが求められはじめました。だからこそ、文部科学省が先頭に立ってアクティブ・ラーニングを推進しているのです。

 

3.アクティブ・ラーニングの役割と文部科学省の学習指導要領

文部科学省の学習指導要領改訂では、「社会に開かれた教育課程の実現」を掲げています。これには、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、 社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む」という想いがあります。ここにあるように変化の激しい社会の一員として、その社会と連動・協働して活躍できる資質や能力を育てることを学習指導要領改訂では目指しています。そして今回の学習指導要領改訂では、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を具体的に示しており、その中の「どのように学ぶか」の具体的手法としてアクティブ・ラーニングがあげられています。

 

文部科学省がアクティブ・ラーニングを推進している理由でも説明したように、いまの社会で求められている資質や能力を育てるために、アクティブ・ラーニングは最適です。アクティブ・ラーニングでは、主体性や対話性を重視しています。主体的、対話的に深く学ぶことによって、これからの社会で必要とされていることを学んでいくことができるからです。今回の学習指導要領改訂では、アクティブ・ラーニングを実施することで、2つのことを目指しています。

アクティブラーニングイメージ

アクティブラーニング実施が目指すこと

1つ目は、生活や働くための知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成することです。時代の変化のなかで求められる仕事が常に変わったり、新しい仕事が次々と生まれている中において、社会に出たときにスムーズに働くことができるように、働くときに求められる知識や技能の習得に力を入れるように目指しています。また、いまから予想できる次世代で求められる資質や能力をすでにカリキュラムに組み込むことも目指しています。実際にプログラミングなどが授業に少しずつ組み込まれているケースもあります。また、グループ・ディスカッションやグループ・ワークなどが、授業で使われているケースも増えてきました。

 

2つ目は、知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善をすることです。これまでの知識量を減らすことなく新しいことを学び続けるためにも、より質の高い学習計画を作る必要があります。また、アクティブ・ラーニングを推し進めるためにも、現在の学習計画をアクティブ・ラーニングの目線から改善することで、質の高い教育を目指しています。

 

この2つの実現を目指す重要な手法として、アクティブ・ラーニングが取り入れられています。

 

4.アクティブ・ラーニング実施時の3つのポイント

アクティブ・ラーニングとは、主体的・対話的で深い学びのことを指します。そして、この「主体的」「対話的」「深い学び」というのが、アクティブ・ラーニングの重要な3つのポイントになります。ここでは、このアクティブ・ラーニングで大切にしている3つのポイントについて解説してきます。

 

主体的な学び

1つ目の主体的な学びでは、学ぶことに興味や関心を持ち、自分のキャリアの方向性と学習との関連性を意識し学ぶこと、また将来の見通しを持って粘り強く取り組むことが何よりも大切なことだとされています。また、学んだらそこで終わりなのではなく、自分の学習活動を振り返り次の学習つなげることができているのかも、主体的な学びができているかの判断基準となっています。

 

対話的な学び

2つ目の対話的な学びとは、学修者である子供同士での対話や、学修者と教職員や地域の人と対話をすること、または先人の考え方を手掛かりにして考えることにより、自分の考え方に囚われてしまうのではなく、自分の考えを広げて深める対話的な学びをすることを意味します。こういった対話的な学びが実践できているかどうかも、アクティブ・ラーニングの評価の一つとなります。

 

深い学び

3つ目の深い学びとは、物事を学ぶ過程で、それぞれの特性・特質に合わせた見方や考え方を踏まえながら、さまざまな別の知識と関連づけることで、学びをさらに深めていくことをいいます。学んだ情報を確かめながら自分の考えを形成したり、問題を自ら見つけてその解決策を考えたり、アイデアを想像することが深い学びといえます。多様な社会になり、答えのない問題が増えているからこそ、学びを学びで終わらせるのではなく、創造的に学びを深めていくことが求められています。

ラーニングピラミッド

各教育機関でアクティブ・ラーニングの導入がすすんでいますが、その一方で言葉だけが先行して、表面的な学習で終わってしまう失敗事例も報告されています。そのため、この3つのポイントをしっかりと抑えて学ぶことが大切になっています。これら3つのポイントを実践して質の高い学びを実現するには、教員や指導者が非常に重要な役割を担っています。教員は指導方法を工夫して、学修者が自分の思考を深めるような発言を促したり、気づいていない視点を気づかせたりする必要があります。そのため、教員側にも学びに必要な指導のあり方の追求や意欲、アクティブ・ラーニングへの知識が必要とされています。アクティブ・ラーニングが成功するには、教員と学修者の学びが不可欠と言えるでしょう。

 

5.国内でのアクティブラーニングの実例

関西大学

関西大学では、学生の「考動力」を育成するため教員・職員・学生による三者共同型のプログラムが行われています。

初年次学生向けのPBL型科目では、能動的学習モデルとしてラーニングアシスタントを活用しており、かつての受講生がスタッフとして他の学生に伝承する形を取っています。

 

芝浦工業大学

芝浦工業大学は文部科学省による「スーパーグローバル大学創生支援」に採択されていることもあり、教育界では高い注目を浴びています。

4年間を通じた課題解決型のアクティブラーニング科目が導入されているだけでなく、ディスカッションに使うためのスペースが解放されており環境も整えられています。

また、海外協定校とのグローバルPBLでは課題解決型ワークショップへの取り組みを行うことができます。

 

6.アクティブ・ラーニングの大切さ

本記事ではまず、アクティブ・ラーニングについて紹介させていただきました。最初にアクティブ・ラーニングの基本について知っていただくために、定義をご紹介しました。アクティブ・ラーニングとは、積極的・能動的な授業・学習するということなのだと理解いただけたのではないでしょうか。

 

次に、文部科学省がアクティブ・ラーニングを進める背景について解説しました。ここでは、社会や産業の構造変化が起きることで、現代の社会で求められることが以前とは大きく異なってきていることをご理解いただけたと思います。また文部科学省は、学習指導要領改訂でこの社会変化に合わせて、学びの内容の変化の必要性を感じてアクティブ・ラーニングの導入を進めていることが知れたと思います。そして、文部科学省の学習指導要領改訂におけるアクティブ・ラーニングの役割を解説しました。アクティブ・ラーニングを実践することで、2つの方向性を目指していることをご理解いただけたのではないでしょうか。

 

最後に、アクティブ・ラーニングの3つのポイントについて紹介しました。アクティブ・ラーニングにおける3つの学び。この3つの学びを実践することで、社会の変化に適応できる人材が育つのだと思います。

 

この記事でアクティブ・ラーニングの大切さや文部科学省が推進している理由がご理解いただけたのではないでしょうか。アクティブ・ラーニングへの理解を通して、これからの時代に合わせた学びの大切さを理解していきましょう。

 

■参考

文部科学省 『新しい学習指導要領の考え方』

文部科学省『新しい学習指導要領の考え方 用語集』

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部