高校生にとって探究学習は、主体性や課題解決能力を育む重要な教育プログラムです。ただ、インターネットによる情報収集が当たり前になっている現代の生徒は、指導をしないとインターネットを利用した表層的な情報収集しかしようとしないでしょう。
より深い探究活動を実践するために、インタビュー活動は、リアルな情報を直接得る貴重な手段として、多くの学校で実践されています。インタビューは、生徒が自分のテーマに関連する情報を集めるだけでなく、社会とのつながりを実感し、進路選択や将来のキャリア形成にも役立つ学びを得られます。
例えば、「地域の持続可能な観光」をテーマにしたプロジェクトでは、生徒が地元の観光業関係者にインタビューを行い、地域の課題や取り組みを直接聞くことで、新たな視点を得ることができます。このような実体験を通じて、生徒は探究テーマの深掘りとともに、自分の興味や将来の目標をより具体化することが可能です。
ただし、効果的なインタビュー活動を行うためには、生徒が適切な準備をし、実施し、その成果を活かす方法を理解している必要があります。本記事では、インタビュー指導の具体的な手法を事例やテンプレートとともに解説します。
インタビュー活動のプロセスと指導方法
インタビュー活動を成功させるためには、「準備」「実施」「振り返り」という3つのプロセスに分けて指導を行うことが重要です。
1. 準備:目的の明確化と質問の設計
指導のポイント:
- 目的を明確にする: 生徒が「なぜこのテーマで話を聞きたいのか」「どんな情報が必要なのか」を具体化できるように指導します。
- 対象者の選定: 生徒のテーマに最も適した専門家や関係者をリストアップさせ、どのようにアプローチするかを検討させましょう。もし担当教員の人脈でアプローチできる人がいたら連絡先を共有するのも効果的です。
- 質問リストの作成: 生徒が適切な質問を考えられるように、以下のような指導を行います。
- オープンクエスチョン: 「どうしてその選択をしたのですか?」のように、自由な回答を引き出せる質問。
- フォローアップの工夫: 想定される回答に基づき、追加で深掘りする質問を用意。
2. 実施:コミュニケーションスキルの習得
インタビューが有効な結果を得られるか否かは、生徒のコミュニケーション能力と当日の態度にかかっています。
指導のポイント:
- 事前練習: ペアワークやロールプレイで、生徒に会話の流れをイメージさせます。特に「相手の話を遮らない」「適切なタイミングで質問を投げかける」練習が効果的です。見本を見せてあげることも効果的でしょう。
- 社会的マナー: 挨拶や感謝の言葉、身だしなみ、時間厳守の重要性を教えます。特に時間については生徒によってはルーズな場合があるので要注意です。
- オンラインツールの活用法習得:Zoomなどの利用方法を事前にレクチャー。カメラ・マイクのオンオフや画面共有の方法を実践をしながら習得させます。
3. 振り返り:成果の整理と次のステップへの活用
インタビュー後の振り返りは、生徒の学びを探究テーマに結びつける重要な段階です。
指導のポイント:
- 情報の整理: メモや録音データをもとに、得られた情報を分類し、探究テーマとの関連性を考えさせます。この際、追加の調査が必要になる場合も多いでしょう。わからないこと、疑問に思ったことをメモとして残していくことが重要です。
- 新たな問いの発見: インタビューを通じて見えてきた新しい課題や次の調査の方向性を考える場を設けます。
- 共有とフィードバック: クラス内での発表を通じて、他の生徒からの意見やアドバイスを受け取る時間を作ります。何も質問が出てこない場合も想定されるため、聴講側の生徒にも「聞いて疑問に思うことを必ず出すように」などの指導が必要です。
インタビュー活動をサポートするツールとリソース
1. インタビュー質問テンプレート
初めてインタビューを行う生徒向けに、以下のようなテンプレートを提供します。
- 「この分野に興味を持ったきっかけは何ですか?」
- 「現在の課題や問題点は何だとお考えですか?」
- 「将来この分野がどのように発展すると思いますか?」
こうしたテンプレートをベースにインタビューを組み立て、会話の流れで生じた追加の質問をなげかけられるように指導しましょう(慣れないうちは難しいかもしれませんが)。
2. スケジュールと進行のタスク管理リスト
生徒がインタビューの進行を管理できるよう、タスク管理リストを配布します。
- 対象者の連絡先を確認
- 質問リストを完成させる
- 必要な録音機器やメモ帳を準備する
- 感謝のメールや手紙を送る
必要な作業を生徒自身に洗い出させ、それぞれの作業の締切日を設定させましょう。プロジェクトマネジメントの研修にも効果的といえます。
3. ICTツールの活用
デジタルポートフォリオを使い、インタビューの成果を記録・共有します。オンライン会議ツール(ZoomやGoogle Meet)の使い方を教えることで、対面が難しい場合でもスムーズに進行できます。
インタビュー指導を成功させるためのポイント
1. 生徒の主体性を尊重する:
指導者はあくまでサポート役に徹し、生徒が自ら考え、実行できるよう促します。例えば、質問作りは具体例を示しつつ、生徒自身がテーマに合わせてカスタマイズする時間を確保します。
2. 実体験を共有する:
過去に成功したインタビュー事例を紹介し、生徒が「自分もできる」という自信を持てるようにします。
3. トラブルへの対応策を事前に準備する:
インタビューが予定通り進まなかった場合の対応例や、想定外の質問を受けた際のアドバイスを伝えます。
インタビュー活動の経験自体が生徒を成長させる
インタビュー活動は、探究学習の中で生徒に社会とつながる経験を提供し、主体性や問題解決能力を高める大きな効果を持っています。さらに、生徒が得た学びは進路選択やキャリア形成にも直結するため、高校教育における探究学習の中核となる取り組みといえます。
指導者としては、生徒がインタビュー活動を通じて得た経験を次のステップに活かせるよう、適切な支援を行いましょう。そして、生徒自身が未来の可能性を切り拓く手助けとなる環境を整えることで、探究学習の価値を最大限に引き出すことができます。