キャリア教育コラム

IELTS何点取ると何に役立つ?

更新日:2021/05/14

大学入学共通テストの英語で導入の是非が話題になった、民間の英語試験。その中の1つとして挙げられていたのがIELTSなのですが、英検やTOEICに比べるとどんな試験なのかあまり分かっていないという方も多いのではないでしょうか。今回はそんなIELTSについて、中学生・高校生との関わりを考えながら深掘りしていきたいと思います。

 

IELTSとは?

IELTSについて取り上げると言いましたが、そもそもIELTSとはどのような試験なのかについて触れていきたいと思います。

 

IELTS(International English Language Testing System:アイエルツ)は、英語が飛び交う環境で授業を理解したり仕事や生活をしていくための英語力を測るために考案された試験です。リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4技能がおよそ3時間の試験で測定されます。この試験は、海外への留学や就職、移住などの際に英語力を証明するための試験として、世界140カ国・10000以上の機関で採用されており、世界で年間300万人も受験しています。

 

この試験の特徴としては、学術的な用途で用いる英語と一般的な生活を送る際の英語の2つを、2種類のテストタイプのうちから1種類を選ぶことで測定できるということが挙げられます。受験者の留学先の大学・大学院の授業を受講できるレベルかどうかを測る際は「アカデミック・モジュール」を、移住先での生活に困らない英語運用能力を受験者が持っているかを判断する場合は「ジェネラル・トレーニング・モジュール」を選択します。中学生・高校生の場合はアカデミック・モジュールを受験する場合がほとんどですので、ここからはIELTSのアカデミック・モジュールに絞ってお話しします。

 

 

IELTSの各スコアの想定レベルはどれぐらい?

 

IELTSの基本情報を抑えたところで、ここからはIELTSでの英語運用能力の評価方法について取り上げていきたいと思います。

 

IELTSの結果は合格・不合格という判断はなく、1.0から0.5刻みに9.0まであるバンドスコアで表されます。この点はTOEICに似ていますね。このバンドスコアは、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの各パートごとに表されます。また、総合評価として「オーバオール・バンド・スコア」が与えられます。

各バンドスコアの解釈は以下の通りです。

この解釈だけでは各バンドスコアのレベル感がいまいち掴めないという方も多いはず。そこでここからは、言語能力の基準としてよく用いられるCEFRを使いながら、日本の中学校・高校では馴染み深い英検と比較して、各バンドスコアを見ていこうと思います。

 

まずCEFRについて少し説明しましょう。CEFR(Common European Framework of Reference for Languages:セファール)とは言語運用能力を説明する枠組みのことで、どんな言語にも適用することができるものです。A1、A2、B1、B2、C1、C2の6つに分けられ、A1からC2にかけて言語運用能力の熟練度が高くなっていきます。

 

日本の大学受験では一般的に英検2級以上の取得が奨励されていますが、英検2級はCEFRで言うとB1にあたり、以下のようなレベルだとされています。

 

・仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。
・その言葉が話されている地域にいる時位に起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。
・身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。
(文部科学省「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」より)

 

CEFRにおける B1は、IELTSでいうとおおよそ4.0から5.0とされています。そして、日本の大学受験で加点対象になることの多い準1級はCEFRで表すとB2で、これはIELTSでいうところのおおよそ5.5から6.5と言われています。

 

ちなみに海外留学におけるIELTSの基準は受け入れ機関によって異なりますが、一般的にオーバーオール・バンド・スコア6.0から6.5を基準とする場合が多いです。中には7.0を基準とする教育機関もあり、日本の大学入試の基準よりもさらに高いと言えるでしょう。

 

また、受け入れ機関によってはオーバーオール・バンド・スコアだけでなく、各技能のバンドスコアにも基準を設けているところもあります。この場合、極端に苦手な技能のスコアを得意な技能のスコアで補い、オーバーオール・バンド・スコアを満たすという方法が効かないため、注意が必要です。

 

 

中学生・高校生にとってIELTSを受験するメリットは?

 

さて、IELTSの各バンドスコアのレベル感について見ていきましたが、中学生や高校生がIELTSを受験するメリットについて見ていこうと思います。

 

まずIELTSの大きなメリットの1つとして、大学受験と留学の両方に有効なテストであるということが挙げられます。日本の中学校・高校で広く受験が奨励されている英検は、日本国内の大学受験においては結果の活用が進んでいます。しかし、日本の大学に留学後、海外へ留学したいと考えた際には、取得済みの英検の結果では自らの英語運用能力の証明になりません。TOEICも日本では広く受験が進んでいますが、TOEICの試験内容はビジネスシーンに寄っており、日本の大学受験や海外留学の際にスコアを受け入れてもらえないことが多くあります。

 

この点、IELTSは大学受験も海外留学も広く対応できる試験であり、中学生や高校生が早いうちから受験することで、大学受験だけでなくその後の海外留学を視野に準備を進めることができます。IELTSの結果は2年間有効なので、タイミングが合えば大学入試で使用したものを海外留学への応募の際に流用することも可能です。

 

また、IELTSは年間の試験日が多く、結果発表も早いため、大学入試や海外留学の準備を進める上で、学生に優しいテストの1つです。年間の試験実施予定日は36日以上あり、これは英検やTOEICよりも多い日数です。結果発表については、筆記試験から13日目にはオンラインで結果を確認することができますが、これはTOEICよりも早く、英検とも同じぐらいかそれより少し早い日数です。

 

ここまで 英検やTOEICと比較したIELTSの優位性を述べてきましたが、IELTSと同じぐらい耳にするTOEFLとはどう違うのか、気になった方も多いはず。大学受験と海外留学との併用が可能である点はTOEFLも同じですし、試験日の多さや結果発表の速さも同程度です。ちなみに、受験料の高さも大体同じぐらいで、英検やTOEICより高い受験料(IELTS:25380円、TOEFL:245USドル)です。

 

かなり似ているテストと言えますが、最大の違いはテストの実施方式です。TOEFLで一般的なiBTテストは、4技能を全てコンピュータ上で受験するテストです。日本の中学生や高校生にとっては、実際の人間ではなくコンピュータの画面に向かって、マイクを通じてスピーキングの試験を受けたり、タイピングでライティングの試験をこなしたりするのはあまり慣れない行為なのではないでしょうか。一方、IELTSは紙と鉛筆で実施するテストで、スピーキングの試験も1対1の面接試験であり、英検慣れした中学生・高校生にとって心理的負担の少ないテスト方式だと言えます。

 

 

IELTSは大学受験と海外大への交換留学を希望する生徒におすすめのテスト

 

IELTSの特徴について見ていきましたが、いかがでしたでしょうか。IELTSは英検などに比べて受験料が高いものの、大学受験のその先の海外留学にも活用できる試験で、TOEFLよりも受験時の心理的ハードルが低いテストです。

 

日本の大学受験を主目的に据えるならば、まずは出願基準としてよく設定される4.0から5.0を目指し、その後、加点対象になりやすい5.5以上を目指して勉強するのがいいでしょう。海外大学への進学や交換留学を主目的に置くならば、6.0から7.0を目指すことが必要です。

 

このように考えると、特に、日本の大学へ入学した後に海外の大学へ交換留学したいという人にとって、IELTSを早いうちから受けておくことは良いことなのではないでしょうか。

 

参考資料

BRITISH COUNCIL「IELTSとは」
Cambridge Assessment English「Common European Framework of Reference for Languages (CEFR)」
CIEE Japan「TOEFL iBTテストとは」
日本英語検定協会「IELTS」
日本英語検定協会「バンドスコアの解釈について」
文部科学省「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」

 

 

 

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部