キャリア教育コラム

GIGAスクール構想とは?デジタル庁創設で教育現場はどう変わる?

更新日:2021/09/27

2021年9月に日本では新たな行政機関としてデジタル庁が設置されました。デジタル技術による生活や活動の向上を図るデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する機関です。このデジタル庁は、横断的に他の省庁と連携して、様々な施策を展開しています。教育の分野でも文科省とデジタル庁が教育現場でのDX化に向けて環境整備を行われています。

 

文部科学省はデジタル庁と連携して、令和5年度末までに、児童生徒に1人1台のICT端末とそのための高速大容量の通信ネットワークを整備するGIGAスクール構想を掲げ、その実現に向けて準備が進められています。ハード面だけでなく、授業内容・指導方法や日常でのICTの活用などソフト面でも様々な整備がなされていきます。教育現場で大きな転換期になるGIGAスクール構想とはどういった取組なのでしょうか?

GIGAスクール構想とは?

GIGAスクール構想とは、令和元年から令和5年にかけて文部科学省が学校現場で全ての子どもたちの学びを保障できる環境の整備を行う一連の計画のことを言います。前述の通り、児童生徒1人1台にICT端末を普及し、その活用に向けたハード・ソフト面での環境を整備する取組です。文部科学省によると、GIGAスクール構想の目的について以下のように述べています。

 

Society 5.0時代を生きる全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びを実現するため、児童生徒の「1人1台端末」等のICT環境を整備

 

GIGAスクール構想は、環境変化の激しい現代社会で、全ての子どもたちが環境に適したベストな学びを享受できる場を整備することを目指しているものです。なぜこのような環境が必要となったのでしょうか。社会変化には4つの大きな転換期を過去迎えており、現在、4つの波に加えて新たな社会変化が起きようとしていると言われています。それがSociety5.0です。今まで人類は以下の4つの社会変化を体験してきました。

 

①Society 1.0 狩猟社会:紀元前8000年以前に起きたものであり、狩猟により最低限の食料を確保し、最低限の住居を構え、少人数のグループによる生活を営む環境を整備がなされた状況

②Society 2.0 農耕社会:紀元前8000年ごろに起きたものであり、農業による食料の確保と定住による土地の整備し、集団生活による生活の安定がなされた社会変化

③Society 3.0 工業社会:1800~1900年ごろに起きたものであり、産業革命の工業化による生産性の向上と大衆社会の形成がなされた社会変化

④Society 4.0 情報社会:1990年代ごろにに起きたものであり、インターネットやパソコンなどのICT環境の普及に伴う経済の発達なされた社会変化

 

この4つの社会の波に加えて、

 

⑤Society 5.0 :AIやVRなどのデジタル革新による社会が抱える様々な課題を解決しようとする動き

 

というような新しい社会の波が起き始めています。ICTの活用という点では、⑤Society5.0は、④情報社会とも変わらないように見えますが、大きな違いは、情報社会はあくまで製造業の革新や生産性の向上といった経済性に着目されている部分です。経済の発展のみならず、持続可能な社会を整備していくことがSociety 5.0では重要視されています。こうした流れから世界的にもSDGs(持続可能な開発目標)が掲げる国や企業が増えてきています。

 

社会が変化するスピードはどんどん早まってきており、①農耕社会から②工業社会まで10000年かかったものが、③工業社会から情報社会では200年、そして、今日起きている新しい社会の波であるsociety5.0については、わずか30年足らずとなってきています。今後も社会は激しいスピードで大きく変化をしていく可能性があります。このような社会変化の中でも子どもたちが可能性を広げながらも充実した生活を送れるよう、以前紹介した探究学習やGIGAスクール構想による環境整備が求められているのです。

探究(探求)学習のススメ~生徒への指導方法・事例も紹介~

 

教育現場のICT・DX化は、昔から唱えられていることですが、なぜ現在まで解決されてこなかったのでしょうか。一体どんなことが課題となっているのでしょうか?

何が教育現場のICT化・DX化を妨げているのか?

2019年の文部科学省の調査によると、教育用コンピューター1台あたりの児童生徒数は全国平均で5.6人/台という調査結果があります。これは、例えると1クラス30人だった場合、5台ほどのパソコンをクラス全体で利用しているような状況です。仮に調べ学習を行った場合でも、グループ1人しかパソコンを使えないというような状況になります。このような課題の影響と相まって、授業でのICT機器の利活用時間について、日本はOECD加盟国の中で最下位という結果が出ています。

 

また、2021年7月に合同で調査を行ったデジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省が行った 「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート調査」では、児童生徒から、そもそも教育現場のネットワークが整備されていなかったり、整備されていたとしてもネットワークの速度が遅いとことを課題点として回答しています。その他、学校外へのタブレットやパソコンなどのICT機器の持ち出しができない学校が多く、学習での使うシーンが限られるといった回答も多数ありました。そもそもICT機器をもっていない児童生徒が多く、仮に配布されても環境面での課題は大きくあるようです。

 

教員の回答からは、教員向けのICT環境が整備されていないこと、ICTリテラシーを持つ教員が限られており、特定の教員に業務が偏り負担がかかってしまう状況があり、教育現場ではICT・DX化について懸念を持っているようでした。また、授業でのICTの活用がわからないという回答が多くなされており、必要であると感じているものの、踏み込めないというのが実情のようです。

 

上記のことから、ICT機器や通信環境の整備しただけでは、教育現場のICT・DX化は進みません。子ども・教員共に、機器の使い方や授業での活用の仕方など、ICT利活用に向けたソフト面での支援を充実させることが必要になってきます。では、GIGAスクール構想は、どのような方法でこれらの課題をに解決して、具体的にどのような環境を整備されていくのでしょうか。

 

GIGAスクール構想で行われる具体的な施策とは?

文部科学省はGIGAスクール構想で具体的な環境整備策として以下の点を掲げています

 

出典:文部科学省(2021) 『GIGAスクール構想など教育のデジタル化の推進に向けた政府全体の取組について』

 

GIGAスクール構想では、主に、①児童生徒へのICT機器の配布や学校内外での通信環境の整備を行うハード面、②学習指導要領の改訂や授業でのICT機器の積極的な活用を行うソフト面、③ICTの活用をサポートする指導者やサポーターを育成・設置する人材の面での施策がなされていきます。

 

②のソフト面では、EdTechとSTEAM教育も積極的に活用していくことが計画の中で取り上げられています。EdTech教育とは、「Education(教育)×Technology(技術)」をかけ合わせた教育手法です。代表的な教育プログラムとしては、Eラーニングと言われるオンライン学習やAI技術を活用した生徒の特性を見極め各人に適した学習プログラムを提供するアダプティブラーニング、VRを活用した疑似授業体験などが挙げられます。

 

STEAM教育とは、「科学(Science)」、「技術(Technology)」、「工学(Engineering)」、「芸術(Art)」、「数学(Mathematics)」の5つの領域の分野を活用して、横断的に課題発見能力とクリエイティブ力を養う教育手法です。代表的なプログラムとして、ロボット制作やプログラミング学習などが挙げれます。

STEAM教育については、過去に紹介した記事がありますので、こちらもご覧ください。

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こうした教育手法を活用しながら、従来の教科教育でも、統計データを活用してプレゼンテーションを行ったり、実験の様子を録画し、その内容を元に分析を行うなどを生徒自らが自主的に行うような学習も想定されています。また、保護者への連絡手段や職員会議のペーパーレス化など、学習に留まらない教育の効率化が今後図られていくことが予想されます。

 

③の人材面では、デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省のアンケート調査から、教員間でICTリテラシーに差があることから特定の教員に負担が集中してしまうという題を解決し、教員の負担を減らすために、学校や教員のサポートができる専門性をもった人材を配置するこで、これらの課題の解決を行っていくようです。

 

上記のような具体的な施策を中心に、全ての子どもたちが公正で最適化された学習できる環境を整備することで、児童生徒の可能性や主体性を引き出す場づくりがGIGAスクール構想で行われていきます。

 

まとめ

デジタル庁新設により、教育現場で新たに運用されていくGIGAスクール構想。その内容は、全ての子どもたちに1人1台のICT機器を配布し、その利活用できるようハード面・ソフト面でも環境を整備していくものです。実際にこのGIGAスクール構想が実現されれば、社会変化が激しい現在社会においても、子どもたちが安心・安全で平等に学べるような場づくりになっていくのではないでしょうか。

 

〇参考文献

・文部科学省 『GIGAスクール構想の実現へ』

・デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省『GIGAスクール構想に関する教育関係者への アンケートの結果及び今後の方向性について』

・文部科学省(2021) 『GIGAスクール構想など教育のデジタル化の推進に向けた政府全体の取組について

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部