キャリア教育コラム

「クリティカルシンキング」最適解にたどり着く思考法を理解する

更新日:2018/10/11

インターネットの普及で様々な情報が簡単に入手、閲覧できる環境になっています。しかし同時にフェイクニュースなども多く溢れ、情報の正確性が問題にもなっています。道具や科学の進化は多くの恩恵を生みますが、使い方によっては薬にも毒にもなり、使う側のモラルや良識、正確性を見極める力が必要となります。物事や情報を受け入れる際に自分にとって必要な情報以外はフィルタリングする能力、思考方法にクリティカルシンキングがあります。日々の教育、生活に応用できるようにクリティカルシンキングの考え方を理解しましょう。

 

クリティカルシンキング(批判的思考)とは

 

クリティカルシンキングとは、

“物事や情報を無批判に受け入れるのではなく、多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解すること。批判的思考法。”

引用元:コトバンク大辞林「クリティカルシンキング

 

クリティカルシンキングとは公開・拡散されている情報を受動的に受け入れるのではなく、正確性などを客観的、多角的、論理的に考察し検証する思考法で「なぜ?」「本当に?」と問いかけることが思考のスタートになります。日本語では批判的思考法と訳されますが、実際は批判よりも検証の意味合いが強いと理解するといいでしょう。

 

哲学者エニスのクリティカルシンキングの定義

哲学者エニスはクリティカルシンキングを行える人の性質を以下のように定義しています。

 

■クリティカルシンキングができる人の性質

1.言われたこと、書かれたこと、伝えられた内容か意図している意味が明晰に分かること
2.結論や問いを確定し、これに焦点をおくこと
3. 全体的な状況を説明すること
4. 根拠を探し与えること
5. 十分に情報を得ようとすること
6. 他の選択肢を探すこと
7. 状況が要求するかぎりの正確さを追求すること
8. 自己の基礎的な信念を反省的に意識しようとすること
9. 偏見のないこと:自分自身の意見よりも他人の意見を真剣に考慮すること
10. 証拠と理由が不十分であるときには判断を差し控えること
11. 証拠と理由が十分揃っていたら、その立場をとる(あるいは変更する)こと
12. 自分自身にクリティカルシンキングの能力を用いること

引用元:http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/publications/journal/no10/15.pdf

 

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い

クリティカルシンキングの意味を調べると論理的という言葉がよく使われています。同じく論理的に考える思考法としてロジカルシンキングがありますが、クリティカルシンキングとロジカルシンキングはどのような違いがあるか比較して解説します。

 

ロジカルシンキングの特徴
・課題、問題を要素・要因ごとに細分化
・要素、要因を分類し整理する
・要素、要因が論理的に破綻していないか検証する

 

クリティカルシンキングの特徴
・課題そのものの前提が正しいのかを検証
・根拠を証明する
・決まっている解決策や手法以外はないのか検討

 

 

ロジカルシンキングは1つの課題の仮説が論理的に組み立てられているか、組み立て、構成がおかしくないかを掘り下げます。一方のクリティカルシンキングは課題、仮説がそもそも正しい根拠の元に提示されているのか、他に有効な案や考え方がないのかを考察する思考法になります。これはそれぞれが全く違う考え方なので相反する訳ではなく、両方を用いて思考することでより精度の高い、仮説の提示や問題提起を行うことができる関係性にあります。

 

クリティカルシンキングの事例

クリティカルシンキングの具体例をみてみましょう。

 

 

このように情報や主張を受動的に受け入れるのではなく、なぜそうなるのか納得できる根拠を明確に検証していく考え方がクリティカルシンキングです。

 

クリティカルシンキングの基本

クリティカルシンキングを行う際の基本として、以下のようなポイントがあります。

1.目的、解を定める

2.自他共に思考には偏りがあることを理解する

3.最善策、最適解を求め続ける

 

1.目的、解を定める

まずは目的や導き出す答えを明確にします。ゴールに向かうための最適な手法を検証するのがクリティカルシンキングです。先ほどの例題であれば「雨が降るのか降らないのかを検証し答えをだす」ことがクリティカルシンキングの目的となります。

 

2.自他共に思考には偏りがあることを理解する

人の思考方法や仮説の想起には経験が大きく影響します。そのために当事者は誤った情報を出すつもりはなくても、結果的に適正ではないことも生じます。それは自分自身も然りです。人は思考に偏りがあることを前提に「疑ってかかる」は語弊がありますが、慎重に捉え俯瞰して見ることを意識します。

 

3.最善策、最適解を求め続ける

一度導き出した答えが最適であるかはわかりません。常に他の手段がないか思考を繰り返します。頭の中でPDCAを回し続け、根拠、裏付けも同時に検証します。

 

クリティカルシンキングは最適解を求め続ける思考法

 

クリティカルシンキングは一度解を見つけたら終わりではなく、常に最適解を探し続ける思考法です。人の思考には偏りがあることを前提とすることで、受動的ではなく能動的に情報を検証し正しい解を導き出していきます。ロジカルシンキングなどと併用することでさらに精度が高まっていきます。正確な情報を捉えることは大きな武器になりますので、是非身につけましょう。

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部