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メディアリテラシー教育に役立つ書籍5選

更新日:2022/03/25

インターネットの発達・普及によって生活が便利になった一方で、フェイクニュースやネット犯罪など悪意のある使い方をする人も増えています。情報が溢れて何が正しいかもわからない現代で騙されずに生きるには、情報を正しく読み解くメディアリテラシーの獲得が欠かせません。


今回はそんなメディアリテラシーを身につけるのに役立つおすすめ書籍5冊を紹介します。メディア教育を行う先生向けの本や中高生のお子さんが読むのにぴったりな本を紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

メディアリテラシー教育とは

まずはメディアリテラシーとは何か、メディアリテラシー教育とは具体的のどのような学びを指すのか確認しましょう。

 

メディアリテラシーとは「メディアを主体的に読み解き、コミュニケーション等に活用する力」


総務省が公開している「放送分野におけるメディアリテラシー」では、メディアリテラシーを次の3点でまとめています。

 

1. メディアを主体的に読み解く能力。
2. メディアにアクセスし、活用する能力。
3. メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ) コミュニケーション能力。

引用元:総務省「放送分野におけるメディアリテラシー」

 

主体的に読み解く能力はもちろんですが、活用する能力・コミュニケーション能力という観点が含まれているのは注目すべきポイントです。近年は、インターネットの急速な発達・普及によって、SNS・ブログ・ネット掲示板など誰でも世界中に自分の意見を発信できるようになりました。また日常生活の中にインターネットが深く入り込んだことで、あらゆる情報との距離が近くなっています。こうした変化によって、これまで重要視されてきた読み解く力と同等、またはそれ以上に情報活用能力の向上が求められているのです。

 

メディアリテラシー教育で行われる学び


メディアリテラシー(情報活用能力)は学校教育でも重要視されています。しかし「メディアリテラシー」という特定の科目や教育内容があるわけではありません。国語・社会・情報といった教科の一部で行われていたり、学校が独自で学習機会を設けていたりと、教育内容はさまざまです。

 

メディアリテラシー教育で身につけるべきとされている能力は、主に6つあります。

 

● 情報モラル
● メディアに対する自己コントロール力
● 情報をうのみにせず主体的批判的に受け取る力(クリティカルシンキング)
● 情報機器操作活用能力
● 情報発信能力
● インターネット操作活用能力

 

これらの能力は、パソコンを使って情報を調べてまとめたり、情報の発信源を調べて信憑性を確かめたりする学習で身につけるものとされています。現在は学校で使える実践を研究・公開している機関も増えているので、専門家の力も借りながらより充実した学びを実現することも可能です。
(メディアリテラシー教育についてより詳しく知りたいならこちら

メディアリテラシーの重要性は急激に高まっている

近年メディアリテラシーがより重要視されている原因として、フェイクニュースの問題があります。フェイクニュースを使った情報戦は世界中で激しさを増していて、私たちの生活にも大きく関わってくるものになっているのです。

 

フェイクニュースの危険性


フェイクニュースとは、文字通り「偽のニュース」のことです。意図的に偽のニュースを発信して世論を動かしたり、一部の事実だけ誇張したニュースを流すことで特定の人を不利にさせたりします。

 

アメリカでは、トランプ氏が大統領に選出された2016年の大統領選でフェイクニュースが大きな話題となりました。「ローマ法王がトランプ氏を支持」などのフェイクニュースが出回ったことで、世間では激しい論争が起こり、結果的に選挙結果に影響を及ぼしたと言われています。日本では2016年の熊本地震で「動物園からライオンが逃げ出した」という画像付きのツイートが拡散され、のちにデマを流した投稿者が逮捕される事態となりました。

 

こうしたフェイクニュースは、どれも衝撃的で拡散したくなるもの・あたかも本当のように思えるものであるのが特徴です。最近は映像加工の技術もかなり向上しているので、「実際の写真があるから本物」とは必ずしも言えません。世界中の情報がいつでも手に入っていつでも発信できる現代だからこそ、フェイクニュースに騙される危険性はかなり高まっています。

 

フェイクニュースに騙されないための思考


フェイクニュースに騙されないためには、この4つのポイントが重要です。

 

● 情報の発信元は信頼できるか
● 複数のメディアで報じられている情報か
● 記事内容に誤字脱字、著者名や公開日の不備はないか
● あいまいな文章表現で書かれていないか

 

情報発信のスピードが重視される現代では、テレビ・新聞などのマスメディアも事実確認を怠って誤情報を流すことがあります。早くできることは便利ですが、信頼性が危うくなることも忘れてはいけません。流れてきた情報をすぐ鵜呑みにせず考える習慣は、フェイクニュースに騙されないための重要なメディアリテラシーです。

メディアリテラシー教育に役立つ書籍5選

メディアリテラシー教育に関わる先生向けと、お子さんにメディアリテラシーを身につけさせたい保護者の方向けに、それぞれおすすめの書籍を紹介します。ぜひメディアリテラシー教育を実践する上で参考にしてみてください。

 

【先生向け①】改訂版メディア・リテラシー論 ソーシャルメディア時代のメディア教育 / 中橋 雄


武蔵大学で長年メディアリテラシー論を教える著者が、メディア教育に関わる教員向けに執筆した本です。メディアリテラシーやメディア教育の基本だけでなく、海外のメディア教育の紹介・比較もされています。高等学校におけるメディア教育の考え方や授業で使える教材の紹介もあるので、メディア教育に悩む先生にぜひおすすめです。

出版社:北樹出版
発売日:2021/3/25
価格:2,420円(税込)
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【先生向け②】情報戦争を生き抜く 武器としてのメディアリテラシー / 津田 大介


評論家として数々のメディアにも登場している著者が、朝日新聞の連載「ウェブの見方 本の味方」を元に執筆したものです。SNSの問題やフェイクニュース、ヘイトスピーチなど、インターネット上で起こったさまざまな問題を取り上げて解説しています。メディアリテラシーの重要性が叫ばれるようになった原因について詳しく知りたいなら、一読する価値は十分にあります。話題になったものを多く取り上げているので、メディアについて考える教材として使うのもいいかもしれませんね。

出版社:朝日新聞出版
発売日:2018/11/30
価格:1,001円(税込)
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【先生向け③】池上彰のメディア・リテラシー入門 / 池上彰

 

テレビの解説でお馴染みの著者によるメディアリテラシーの超入門書です。NHK局員としてメディアを作る側にいた経験から、メディアが流す情報の正しい見方・受け取り方を解説してくれます。「メディアリテラシーという言葉自体がさっぱりわからない」という方に読んでほしい初心者向けの一冊です。テレビ・新聞などのマスメディアについて詳しく解説しているので、メディアの歴史からきちんとおさえたい場合にもおすすめです。

出版社:オクムラ書店
発売日:2008/2/1
価格:1,650円(税込)
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【保護者向け①】池上彰さんと学ぶみんなのメディアリテラシー/ 学研プラス

 

代表的なメディアについて学べる①、インターネットの便利さ・怖さが詳しくわかる②、スマホ・SNSとの付き合い方が学べる③の全3巻からなるシリーズ本です。イラストが多く1冊40ページほどと短いので、小中学生でも楽しんで読めます。子ども向けの易しい言葉づかいで書かれているので、専門用語を知らなくても簡単に理解できますよ。

出版社:学研プラス
発売日:2015/2/8
価格:1冊3,080円(税込)、3冊セット9,240円(税込)
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【保護者向け②】13歳からの「ネットルール」 誰も傷つけないためのスマホリテラシーを身につける本 / 小木曽 健


情報リテラシー講師として全国の学校で講演を行う著者が、生徒からの質問をまとめて紹介した一冊です。実際に生徒から寄せられた質問をまとめているので、SNSトラブルや出会い系の問題、スマホ依存問題など赤裸々な内容が盛りだくさんとなっています。後半では保護者から多く寄せられるスマホ・ネットに関する質問も紹介されているので、親子で読むのにもってこいです。

出版社:メイツ出版
発売日:2020/11/15
価格:1,793円(税込)
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メディアリテラシー教育で情報社会を生き抜く力を身につけよう

メディアリテラシーは「メディアの情報を正しく読み解いて活用する能力」です。能力というと取っ付きづらいですが、これを身につけるのは特別難しいわけではありません。まずはメディアがどのように情報発信しているのかを知り、いろんなメディアから情報を得ましょう。1つのメディアだけで信頼しきれずに複数の情報源を探すようになったらバッチリです。インターネットに関するメディアリテラシーは、今回紹介した書籍がとても参考になるのでぜひ気になるものを一冊手に取ってみてください。

 

◎参考資料
・総務省「放送分野におけるメディアリテラシー
・総務省「令和元年版 情報通信白書のポイント 第1部 第4節 4 フェイクニュースを巡る動向

 

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部