「総合的な学習の時間に、地域課題を扱って探究学習を行いたいけど、どのように進めて良いのかわからない!」
このような悩みを抱えている先生は多いのではないでしょうか。
地域課題を探究学習で扱うことで、子ども達が地元に関心を持つきっかけになったり、地域の活性化に繋がったりというメリットがありますよね。
実際に地域課題を解決するために、総合的な学習の時間を使って探究学習を行っている学校は少なくありません。
今回は、地域課題を用いた探究学習の実践事例を4つご紹介いたします。
実践事例を知ることで探究学習のイメージが湧き、授業作りに役立つので、地域課題の扱い方等に悩んでいる先生はぜひ読んでください。
探究学習で地域課題を扱うメリット
地域課題を探究学習で扱うことで、地域の課題の解決や活性化に繋がるというメリットがあります。探究学習を通して、地域に関わる面白さを知ることで、「将来も地元に住んで、貢献したい」と考える子ども達が増え、過疎化等の大きな問題の解決につながる可能性も。
また、子ども達にとって身近な課題なので解決に向かって行動しやすく、地域の大人と関わることでコミュニケーション力等の「社会で生きる力」の向上も期待できます。
実際に地域の企業や行政の協力を得て、地域の魅力をアピールしたり、商品開発をしたりと、課題解決のために励んでいる学校がいくつもあります。
今日紹介する実践事例は、
・町づくりに参加
・地域の商品開発
・町の人口を増やすプロジェクト
・観光地案内
これらの4つです。
それぞれ特色がある取り組みなので、探究学習で地域課題を扱う際の参考にしてください。
実践事例①:町づくりに参加
1つ目に紹介する地域課題を探究学習で扱った実践事例は、岐阜県可児高校の「町づくりに参加する学習」です。
可児高校が地域課題を取り扱った理由は、地域コミュニティの希薄化や教育力の低下を感じたから。教育面で学校が引き受ける負担が大きくなっていることに問題意識を持ち、「子ども達を取り巻く人たち全員が教育の主体になる町づくり」のために動き出しました。
地域の諸団体や行政と連携し、町づくりに生徒が参加できる場を作った可児高校。1年生の時は全員が参加し、2年生からは有志で参加できる形にしました。
「地域医療」「防災」「政治参加」「耕作放棄地解消」「多文化共生」などのテーマを扱い、それぞれの課題を解決するために、医師や市職員などの専門家と高校生が一緒になって活動をしています。
担当教員は「町づくりへの参加を通して、子ども達の学習意欲やキャリア意識、郷土愛が向上した」と手応えを感じています。
地域の大人が高校生と関わることで、「学校任せではなく、みんなで教育をする」という意識も高まりますね。子ども達にとっても、地域にとってもメリットのある活動です。
実践事例②:地域の商品開発
2つ目に紹介する探究学習の実践事例は、北海道標茶高校の「「しべパフェ」で元気な町づくりプロジェクト」です。酪農が盛んな標茶町ですが、若者の流出と人口減により産業振興の点で課題を抱えています。
標茶高校は町の活性化と魅力作りのために、製品開発に着手。
総合の時間を18時間使い、「しめパフェ」と「標茶」を組み合わせた「しべパフェ」を考案しました。
子ども達は、学校祭や産業祭りでしべパフェを販売したり、JR内で観光客に提供して自分たちの取り組みをPRしたりしました。産業祭では、400食が30分で完売するほどの人気商品に。
この取り組みを通して、パフェを柱とした町おこし協定が締結される等、地域の活性化に繋がっています。
高校生が地域の食材を使って新しい商品を開発・販売することで、地元の酪農や町おこしに興味を持つきっかけになり、人口減の解決も期待できます。
実践事例③:町の人口を増やすプロジェクト
3つ目に紹介する探究学習で地域課題を用いた実践事例は、北海道弟子屈中学校の「人口1万人プロジェクト」です。
弟子屈町も2つ目に紹介した標茶町と同様に、若者の流出と人口減の課題を抱えています。
高校が町に1つしかないため、高校生になると町外に出て行く子ども達が多いのが現状。
その課題を解決するために、中学生が「人口を増やすためにはどうすべきか」を考えています。
町の課題を明確にしたり、新しい企画を考えたりするために、修学旅行先の地域との比較を実施。
①他の地域と比較をしながら、自分達の町の課題を明確にする
②町の活性化等、人口増に繋がる企画を考える
③教育委員会や「地域おこし協力隊」の方を学校に招いて、総合発表会を実施
このような流れで総合学習を行います。
中学生のアイディアの中には、
・高校の数を増やす
・音楽フェスを開催する
など、学生ならではの視点が。
地元の課題について考えるうちに、町の良さを知り、町づくりに携わりたいという気持ちが芽生える取り組みですね。
実践事例④:観光地案内
最後に紹介する探究学習の実践事例として、長野県の中学校が実施する「善光寺WALK(ウォーク)」を紹介します。
長野県には歴史的建造物である善光寺があり、毎年多くの観光客が訪れています。外国人観光客も多いのですが、情報発信の弱さや外国語で対応できるスタッフが不足しているという点が課題。
この課題を解決するために、地域の魅力を見いだし、情報発信に取り組む活動が「善光寺WALK」です。
総合の時間を28時間使い、
・善光寺の観光における問題点を見つける
・外国人観光客が知りたい情報を集める
・質問に英語で答えるための資料を作る
・グループで善光寺を案内する
・案内や情報の改善点をまとめる
・改善を生かして再度、善光寺を案内する
・振り返り
このような流れで活動を行います。
生徒達は1回目の案内でうまく説明できなかったことや、新しい気づきを活かして情報をまとめ、2回目の案内に繋げるなど自主的に行動していました。
活動を終えた生徒の中には、
「私の住む長野市には、素晴らしい文化遺産としての善光寺がある。長野市のよさを再度発見して、そのことを伝えられるように成長していきたいと考えている。」
このような感想を書いた子も。
自分の地元の良さを再発見し、魅力を外国の人にも伝えたいと思う気持ちが、長野県が抱える1つの課題の解決に繋がるでしょう。
地域課題を探究学習で扱うのはおもしろい!
今回は、地域が抱える課題を探究学習で取り扱っている学校の実践事例を4つ紹介しました。
地域課題を取り扱うことで、活性化や人口の流出防止など、地域にとってのメリットが大きいです。一方で、地域の人たちとの交流や調査、商品開発などを通して、子ども達が学ぶこともたくさんありますよね。
子ども達が地域課題の解決に携われるように準備をするのは、時間がかかります。地域の協力体制を整えたり、子ども達が取り組みやすい授業づくりをしたりと、最初は準備に苦労することも予想できますね。
0から授業を作るのは大変なので、いくつかの実践事例を参考にしながら、自校に合う探究学習のスタイルを見つけてください!
この記事が、「地域課題をこれから探究学習で扱いたい!」と考えている先生の役に立てば幸いです。