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探究学習指導の上で教員も知っておきたいトピックス(国際社会・グローバル編)

更新日:2025/11/29

世界は今、“国際”でつながったまま、同時に大きな分断や課題にも直面しています。貧困や格差、移民・難民の流動、気候変動による環境リスクなど――これらは「遠い国の出来事」ではなく、私たちの未来、日本の社会、地域、さらには自分自身の進路にも影響を与える可能性があります。2025年10月現在、国際機関や研究レポートから新たなデータや分析が次々と示されています。高校の「総合的な探究の時間」で、こうした国際的な課題を扱うことで、生徒たちは “日本 × 世界 × 自分” を結ぶ力を育てられるでしょう。本稿では、最新データ・報告を踏まえつつ、高校生にも取り組みやすく、かつ学びと発信につながりやすい「国際社会の探究テーマ」3つを提案します。

グローバルな貧困・格差と国際的不平等 — 世界と日本を“データで見比べる”

近年、世界の貧困や格差に関する認識はアップデートされています。例えば、2025年10月に公開された UNDP と World Inequality Lab の共著レポートでは、全世界で貧困状態にある人々の多くが、気候ハザードに晒された地域に住んでおり、「貧困 × 環境リスク」が交差する新たな不平等構造が可視化されています。
また、従来の「絶対的貧困」の指標だけでなく、健康、教育、住宅、水・衛生など複数の要素を統合した「多次元貧困 (Multidimensional Poverty Index, MPI)」で評価する試みが増えており、文化・制度・自然災害といった複雑な背景も含めた理解が求められています。

生徒への問い例

  • 世界の国々を「一人あたり所得」「生活水準 (教育・医療・衛生など)」「自然災害リスク」の観点でデータ比較すると、どのような違いや共通項が見えるか?
  • 日本と途上国/新興国との間にある「見えにくい格差」はどのようなものか? (たとえば、教育機会、災害リスク、環境負荷、制度の違いなど)
  • 格差や貧困を減らすために、国際社会や先進国・日本ができる支援や仕組みとは何か?

探究アイデア

  • 各国の所得・貧困・教育・健康などのデータを、表やグラフにして比較。
  • 国際機関 (UN・World Bank など) の報告書をもとに、「多次元貧困」の概念とその限界・課題を書き出す。
  • 日本の若者として「自分たちにできる国際協力・支援のアイデア」を考え、提案資料を作成。

意義: 単なる“悲しいニュース”ではなく、「数値で比較 → 理解 → 問い直し → 提案」の流れを通じて、データ・批判的思考・主体性を鍛えられるテーマです。


国際移動・移民・難民 — 動き続ける人々と受け入れる社会のリアル

2024〜2025年にかけて、国際的な移動(移民・難民・国際労働移動)は依然として高水準にあります。
例えば、先進国を中心に移民の労働市場への参加や統合政策の見直しが進んでおり、医療や福祉、人手不足の補填だけでなく、多文化共生の在り方も問われています。

ただし、移民・難民をめぐる社会統合、雇用・教育の公正性、文化・言語の壁、差別や偏見など、受け入れ国や地域での課題も依然として根強く残っています。

生徒への問い例

  • なぜ人々は国を離れて移動するのか? 経済的理由、環境リスク、紛争、教育機会など、出発国での背景は何か?
  • 移民・難民が来ることで、受け入れ国・地域・学校でどんな変化があるか? メリットと課題は?
  • 日本や自分の地域が「移民・難民を受け入れる社会」になるとしたら、どんな準備・工夫が必要か?

探究アイデア

  • 最近の国際ニュース (移民・難民問題) をまとめ、原因・過程・受け入れ側の対応を整理。
  • 自分の地域または日本での外国籍住民の状況 (数量、職業、生活状況など) を調査。
  • 将来を見据えた「共生プラン (学校・地域・自治体)」を企画・提案。

意義: “人の動き”を通じて国際社会の構造を見ることで、多文化理解・共生・人権・国際協力の視点を育てられるテーマです。


気候変動・環境問題と国際協力 — 地球規模の危機と私たちの役割

地球規模の課題である気候変動や自然災害、環境破壊は、特に貧困や脆弱性と結びつき、多くの国で深刻な影響を及ぼしています。2025年に発表された UNDP の MPI レポートでは、貧困状態にある人々のうち、約 78.8% が「酷暑・干ばつ・洪水・大気汚染などの気候ハザードに曝された地域に住んでいる**」という分析が明らかになりました。
また、世界全体で見れば、過去数十年にわたる経済成長はあったものの、不平等や不均衡な富の分配が気候リスクをさらに不公平に拡大させているとの警鐘もあります。

生徒への問い例

  • なぜ貧困や不平等は気候変動の影響をより深刻にするのか? 社会経済の仕組みと自然環境の関係を考えよう。
  • 国際協力 (支援・技術共有・気候対策) は、気候リスクにどう立ち向かっている? 成功例と課題は何か?
  • 日本の私たち自身にできることは? 消費・生活・価値観を通じて、世界とつながる行動を考える。

探究アイデア

  • 貧困データと気候ハザードデータ (洪水・干ばつ・災害頻度など) を国・地域ごとに重ねて分析。
  • 海外と日本で異なる気候対策や支援の事例を収集し、比較レポートを書く。
  • 学校や地域でできる「気候 × 貧困 × 支援」のアイデア (節電、リサイクル、物資支援、啓発活動など) を企画。

意義: 環境問題を単なる“自然の問題”ではなく“社会問題/人間の問題”として捉え、国際的な視野と主体性を育てる探究テーマです。


いかがでしたでしょうか。生徒によってグローバルへの関心度合いはさまざまかと思いますが、この先の社会では日本国内で生きていくとしても必ずグローバルの影響を受けます。

探究学習で、グローバルは他人事ではないということを生徒自らが気づくきっかけになるかもしれません。

     

執筆者:Strobolights