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インタビュー

他大との合同合宿で学生のやる気を刺激する。地元密着・合宿型のキャリア支援

更新日:2019/05/16

必要性が叫ばれながらも未だ各教育現場で模索が続いているキャリア教育。
このインタビューシリーズでは各教育現場でキャリア教育に取り組んでいる学校関係者の生の声をお届けします。今回は地元の企業や他大を巻き込んだ合宿という取り組みで学生のキャリア支援を行なっている新潟国際情報大学キャリア支援課の西脇さんにお話を伺ってきました。

お話を伺った方

新潟国際情報大学 キャリア支援課 課長 西脇 茂雄様

新潟国際情報大学が取り組む、合宿型キャリア支援プログラム

企業訪問の様子。地元の企業を訪問し課題をもらう。


 

ーキャリア支援型合宿を開催されるようになった背景を教えてください
私は就職指導を行うキャリア支援課の職員で、卒業後の進路支援と企業の採用担当者との求人情報等を共有する業務を中心に従事しています。学外就職ガイダンスなどで県内企業の採用担当者から「大学進学のタイミングで新潟県から出たいわゆるUターン学生は元気がいい」と言われるのに対して、「地元に残っている学生は元気がない」と企業から言われていることが気になっていました。確かに新潟県の学生は小さなコミュニティに属しがちで、そこからなかなか外に出ようとしないのは事実です。ただそんな学生たちも東京のガイダンスに参加した際には必死感が増して活気が出るんですよ。つまりどういうことかというと、学生の資質は東京でも新潟でも実はどこも変わらない。やはり異質な環境に身を置くと人間は意識、行動の面から変化すると考えました。
 

ーだから合宿なのですね

そうです。企業の方にご理解いただきたいのは学生の表面的な覇気だけで資質を判断しないでほしいなということです。地元に残っていると言っても色々な事情がある。地元を愛しているという学生もいるし、家庭の事情があったりもする。そういうことを踏まえずに一方的に企業視点で学生を判断しないでほしいなと。だから私の立場でできることは、もっと気軽に、手軽にいつもと違う環境を作ってあげることだと考えて平成25年から合宿を夏に開催するようになりました。
 

ーキャリア教育合宿の概要を教えてください

キャリア支援課主催の合宿といっても就職合宿ではありません。合宿のテーマは「元気よく目立とう」です。参加するにあたり消極的参加ではなく、常に言動を通して意識的に目立ってほしい事を念頭に企画いたしました。実施期間は1泊2日で参加費を徴収いたします。学生は学年不問で希望制としています。概要は、初日は地元の企業を訪問し業務内容や社員との交流を図り、社会人の考え方などを学びます。訪問時に経営課題や商品企画等企業が抱えている課題を出してもらい解決策に取り組みます。2日目ではディベートの手法などを学びながら訪問先企業を招き、各社の課題の成果発表を実施し寸評などを伺います。また採用担当者と車座になり、仕事観、職業観、人生観など、幅広い視点で交流を図り社会人の考え方等にふれる機会として、学生が充実した生活をおくれるように学んでいきます。
 

ー協力企業開拓はどのようにされていますか?

私は前職が百貨店での外商担当だったので、企業との交渉はそんなに苦労しません(笑)。趣旨をしっかりご説明させていただき、一度合宿にご参加いただくと「来年もぜひ」というリピートも多いのでとてもありがたいなと思っています。特に合宿最後の座談会では企業も学生の素の姿も見られますし、学生との距離も縮まって好評いただいています。最近では新潟県外からの企業からも声がかかるようになり、大変光栄と思っています。
 

他大との合同合宿。そして今後の課題

合宿二日目、座談会を実施。企業も学生もカジュアルな雰囲気で語り合うことができる。


 

ーありがとうございます。そして他大との合同形式での合宿になっていると聞いていますが、どうして合同になったのか経緯を教えていただけますか?

そんなに複雑な経緯ではありませんよ(笑)。大学関係が集まる会合でこの合宿の話をしたのですが、その時に「うちもぜひ参加したい」とおっしゃっていただいた大学があったのです。実際に合宿をやってみて単独で実施するより手応えもありましたし、それに他大学生は本学の学生にとってもいい刺激もあり他大学生から学び得ることのメリットも大きく、コミュニケーションをとることの重要性を考え共同開催を実施いたしました。
 

ー実際に他大の学生と一緒になることでどんな影響がありましたか?

面白いのは同じ学生でも色が微妙に異なるところですね。例えば児童教育を専攻している学生はやはり傾聴力が高い。グループワークをやっていてもワークの取り組み方の姿勢が少し違うのです。また本学にない専門性を持っている学生はワークなどでも個の主張が強いですね。そうした学生がグループの中に入っていると、おとなしい学生はやはり負けてしまう。バックグラウンドが異なる学生同士がグループに入ることによって良い刺激、学びが学生に生まれていると感じます。
 

ー今後、更なる他の大学との合同形式も想定されていますか?

今の所は想定していませんね。数が増えるのはいいことだとは思いますが、その分密度が薄くなってしまいます。この人数規模感だからこそ実現できている熱もあると思っていますし、参加者の満足度、成長実感度が低くなってしまっても意味がありませんから。
 

ーでは今後の課題はありますか?

就職環境が売り手市場になってから、3年生の参加人数が減っていることですね。ただこの合宿は就活のためのものではないので私はもっと1、2年生のうちから参加してほしいなと思っています。1年生の時に保護者の方向けにご案内を出したりもしていますしね。ただ、1、2年生のうちは授業も忙しいのでなかなかその中で合宿にモチベートさせるのは難しいなと感じています。その中でもキャリアの意識が高い1、2年生もいて合宿にも参加しますし、学外の何らかのプログラムにも積極的に参加しています。そして1、2年生の時に参加した学生はその翌年度も継続して参加してくれる傾向にあります。

また、PBLはこれでいいのか、という自問自答があります。企業からの課題に対してプレゼンして終わり、になってしまう。合宿プログラムとしては時間的制約なども踏まえるとこれが限界なのかなと思う一方、企業と一緒になってものを売ってみたり、売上目標に向かって動いたりといった実際のビジネス現場を体験させる手法がないものかと。
 

ー確かにPBLは体験させて終わり、といった限界があるかもしれません

教育プログラムとしてはそれで充分なのかもしれませんけどね。ただ、合宿に参加した学生はやはり就職実績もいいし、成長する手応えがあるからこそもっと他にないか、と。今のところ就職実績でしか計れていませんが、この合宿の経験が社会に出てからどう生かされているのかなども検証できると面白いかもしれませんね。

     

執筆者:キャリア教育ラボ編集部