2027年度(令和9年度)入試から、総合型選抜と学校推薦型選抜で「面接による評価」が原則として必須になります。文部科学省が2026年5月27日付で通知した実施要項に盛り込まれた変更で、9月から始まる総合型選抜の出願に直接関わる内容です。
この変更の目的は探究学習の推進ではなく、年内入試のあり方の是正にあります。ただし結果として、対話を通じて生徒の意欲や適性を見る場面が増えることになります。探究学習やPBL(課題解決型学習)は、こうした場面で生きる力を育てる機会になり得ます。本記事では変更点を正確に整理したうえで、探究・PBLの指導とどうつなげられるかを考えます。
この記事の要点
- 2027年度入試から、総合型選抜・学校推薦型選抜では面接による評価が原則必須になります
- 総合型選抜の出願受付は2026年9月1日以降、学校推薦型選抜は同年11月1日以降です
- 一部の非公募型学校推薦型選抜には例外が、既存の選抜区分には令和11年度入試までの経過措置があります
2027年度入試で何が変わったのか
「面接による評価を必ず行う」が明記された
文部科学省は2026年5月27日、令和9年度大学入学者選抜実施要項を各国公私立大学長などに通知しました。前年度からの主な変更点の筆頭に挙げられているのが、総合型選抜および学校推薦型選抜において「面接による評価を必ず行うこと」という一文です。
これにより、総合型選抜・学校推薦型選抜として実施する以上、原則として面接による評価なしで合否を判定することはできなくなります。
「面接」に含まれる形式は広い
指導を考えるうえで重要なのがこの点です。実施要項が示す「面接」には、ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問等が含まれます。オンラインによる実施も認められています。
机を挟んだ一問一答だけを想定しておけばよい、というものではありません。グループでの議論や、自分の取り組みを提示して説明する場面も「面接」の一形態として扱われます。
例外と経過措置がある
すべての大学・すべての選抜が2027年度から一斉に変わるわけではない点は、生徒や保護者に正確に伝える必要があります。実施要項では次の2つが示されています。
- 高等学校との緊密な連携により丁寧なマッチングが図られていると考えられる非公募型の学校推薦型選抜で、合格した際には入学することを志願者が確約して受験するものについては、大学の実情に応じて面接の要否を判断できる
- 令和8年度に既に実施されていた選抜区分で、令和9年度入試から面接を導入することが難しいものについては、遅くとも令和11年度(2029年度)入試までに面接を導入する
いわゆる指定校推薦は前者に該当し得ますし、既存の選抜区分には後者の経過措置が適用されます。「2027年度から全員に面接がある」と断定せず、志望校の募集要項で選抜区分ごとに確認するよう促すのが正確な案内です。
AI面接での代替は認められない
文部科学省は2026年7月30日に実施要項等に関するQ&Aを更新し、面接の実施方法を具体的に示しました。評価者が直接評価を行うこと、充実した内容の質問に対して受験者が即時にインタラクティブに応答するものであること、適切な評価基準の設定や複数名の評価者による評価などの体制を整えることが挙げられています。そのうえで、AI面接やペーパーインタビューで必須とされた面接を代替することはできないと明記されました。
なお、これは大学側が実施する面接の話であり、志望理由書の作成や面接練習の場面で受験生が生成AIを使ってよいかどうかは別の論点です。混同しないよう整理して伝えたいところです。
変更の背景は「年内入試の学力偏重」への是正
今回の変更は探究学習を推進するために行われたものではありません。文部科学省の通知では、令和8年度入試において、一部の大学の総合型選抜・学校推薦型選抜で、2月1日より前に実施される教科・科目に係る個別テストの配点割合が著しく高い、他の要素が点数化されていないなど、選抜区分の趣旨に合わない事例が見受けられたことが指摘されています。
Q&Aでも、教科・科目に係る個別テストは高等学校段階での基礎的な学習の成果を問うものとし、その成績が実質的に評価・判定の大部分を占めることがないよう留意が求められました。年内入試が実質的な一般選抜の前倒しになっている状況への歯止め、というのが今回の位置づけです。
入試制度には、もともと探究を評価材料にする仕組みがある
一方で、探究学習と入試の接点は今回新しく生まれたものではありません。実施要項は以前から、志願者本人が記載する資料の活用について次のように定めています。
- 活動報告書には、「総合的な探究の時間」や理数探究等において取り組んだ課題研究等の記載を求める
- 特に総合型選抜や学校推薦型選抜においては、志願者本人が記載する資料をプレゼンテーションなどにより積極的に活用する
- 総合型選抜・学校推薦型選抜では、成果獲得に向けた努力のプロセスや大学で学ぼうとする意欲を多面的・総合的に評価する工夫に配慮する
文部科学省が示す活動報告書のイメージ例にも、課題研究について「課題テーマを選んだ理由」と「概要・成果」を記入する欄が設けられています。
つまり、探究の記録を評価材料として使う仕組みはすでに用意されていました。そこに今回、対話型の評価が原則必須として加わったことで、学校の探究活動を面接準備につなげる余地が大きくなった、と捉えるのが実態に近い理解です。
探究学習・PBLで培った力を面接にどうつなげるか
準備できるのは「答え」より「考え方」
面接が「即時にインタラクティブな応答」を求めるものである以上、想定問答を暗記させる指導だけでは足りません。用意した答えを言い終えたあとに一歩踏み込んだ問いが来たとき、その場で考えて応じられるかどうかが見られます。
これは探究学習やPBLで日常的に起きていることと近い構造です。中間発表で「なぜその方法を選んだのか」と問われ、答えに詰まり、考え直す。この往復の経験が、面接の場面でも生きてきます。
問いを立て直した経験は語る材料になる
探究の成果発表では、きれいにまとまった結論が評価されがちです。しかし面接で厚みが出るのは、むしろ途中でつまずいた場面です。仮説が外れた、データが集まらなかった、問いを立て直した。こうした経験は、活動報告書の「課題テーマを選んだ理由」を書くときにも、その内容について問われたときにも、具体的な手がかりになります。
問いを変えることは失敗ではありません。高等学校学習指導要領解説では、探究は問題解決的な学習が発展的に繰り返されていくものとされ、最初に立てた問いそのものが問い直され、質や精度が高まっていくことも示されています。この点を生徒に伝えておくと、面接で方向転換の経験を臆せず語れるようになります。
探究・PBLの指導に加えたい3つの工夫
1. 発表会を「問い合う場」にする
発表10分・質疑2分という配分では、質疑が形式的な確認で終わりがちです。発表時間を短くしてでも質疑を厚くし、教員だけでなく生徒同士が問いを出す設計にすると、即応する経験を積めます。「感想」ではなく「質問」を出すルールにするだけでも変わります。
2. 問いの変遷とテーマ選択の理由を記録する
最終成果物だけを残すと、途中の思考が消えてしまいます。問いがいつ、なぜ変わったのかを短くメモさせ、キャリア・パスポートや探究のポートフォリオに蓄積しておくと、出願書類の作成時にも面接準備にも使えます。3年生の夏に「何を書けばいいかわからない」となる状態を防ぐ効果もあります。
3. データを自分の言葉で説明する経験を挟む
今回の実施要項では、文理横断・文理融合教育を通じた課題解決力の涵養等の重要性に鑑み、言語能力および数理的思考力の育成に十分配慮することが盛り込まれました。ただしこれは、主として大学側が実施する教科・科目に係る個別テストの設計について書かれた規定であり、高校の探究授業に数値データを必ず取り入れるよう求めるものではありません。
そのうえで、調べた数値を自分の言葉で意味づけして説明する経験は、言語能力と数理的思考力を往復する学習として、面接での説明にも生かしやすいものです。テーマに合う範囲で取り入れる、という位置づけが適切でしょう。
進路指導として9月に確認しておきたいこと
出願が本格化するこの時期、生徒と一緒に押さえておきたい確認事項です。
- 志望校・志望学部の選抜区分ごとに、面接が課されるかどうか
- 課される場合の形式(個人面接か、集団討論か、プレゼンテーションを伴うか)
- 対面かオンラインか。オンラインの場合は通信環境と本人確認の手順
- 出願要件として大学の講義受講や課題提出が求められていないか
- 活動報告書や志望理由書に書いた内容と、面接で語る内容が食い違っていないか
いずれも各大学の募集要項が基準になります。予備校や情報サイトのまとめは全体像の把握に有用ですが、最終確認は必ず大学の公表資料で行うよう指導したいところです。
よくある質問
Q. 2027年度入試から、すべての大学で面接が実施されますか。
A. 原則として必須ですが、令和8年度に既に実施されていた選抜区分で導入が難しいものには、遅くとも令和11年度(2029年度)入試までという経過措置が示されています。志望校ごとの確認が必要です。
Q. 指定校推薦でも面接は必要ですか。
A. 高校との緊密な連携により丁寧なマッチングが図られ、合格時に入学を確約して受験する非公募型の学校推薦型選抜については、大学の実情に応じて面接の要否を判断できるとされています。
Q. オンライン面接は認められますか。
A. 認められています。ただし本人確認および不正防止のための措置を講じることとされています。AI面接やペーパーインタビューによる代替は認められていません。
Q. 探究のテーマと志望学部が一致していないと不利になりますか。
A. テーマの一致そのものが一律の要件になっているわけではありません。ただし評価の基準は大学・学部のアドミッション・ポリシーや選抜方法によって異なります。探究テーマが志望分野と違う場合でも、そこでどのように問いを立て、調べ、考えを深めたのか、その経験が大学での学びとどうつながるのかを説明できれば、評価材料の一つになり得ます。
Q. 学校として、どんな面接練習をすればよいですか。
A. 想定問答の暗記に加えて、答えたあとに「なぜ」を重ねる練習が有効です。探究の中間発表や日常の振り返りの場を使えば、特別な時間を新設しなくても取り組めます。
まとめ
総合型・学校推薦型選抜の面接原則必須化は、年内入試の学力偏重を是正するための変更です。探究学習を評価するために導入されたものではありません。
ただし、活動報告書に課題研究の記載を求める仕組みや、本人記載資料をプレゼンテーションで活用するという方針は、もともと実施要項に置かれていました。そこに対話型の評価が加わったことで、日々の探究活動を進路指導につなげる余地は確実に広がっています。
まずは9月の出願にあたり、志望校の選抜区分ごとの面接の有無と形式を、大学の公表資料で確認するところから始めてみてください。
参考・出典
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項及び大学院入学者選抜実施要項等について(通知)」(令和8年5月27日付け8文科高第318号)
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(別紙1)
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項等に関するQ&A」(令和8年7月30日更新)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」
- 一次資料の所在:文部科学省「入学者選抜実施要項」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1346785.htm
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